レアアース(希土類金属)はなぜEVに使われるのか 自動車メーカーが愛用する17の金属
公開 : 2023.07.24 06:25
EVの普及が進むにつれて、よく耳にするようになった「レアアース(希土類金属)」とは一体どんなものなのか。実は、レアアース自体は特に珍しいものではありません。簡略的に解説します。
実は希少ではない? 身近で活躍するレアアース
消費者であるわたし達に直接影響を与えるテクノロジーが発展していくにつれて、かつては教科書の中に隠れるようにしか見つからなかった用語が、一般の人々の意識に浮上してくる。
「レアアース(希土類)」は、朝食の席で誰もが口にする言葉ではないかもしれないが、自動車に関心のある人なら誰でも知っている言葉であろう。特に、EVが普及し始め、地球から産出される希少な物質が注目されるようになってからはそうだ。
では、レアアースは一体どんなもので、何に使われるのだろうか? その呼称とは裏腹に、実は特に珍しいものではなく、EVに関連して突然「有名」になったわけでもない。ICE(内燃エンジン)車だけでなく、一般家庭で見られる多くのテクノロジーにも、すでに広く使用されている。
レアアースは金属であり、元素周期表では17種類ある。自動車業界では、EVの永久磁石モーターへの使用でよく知られているが、すべての自動車メーカーが永久磁石モーターを導入しているわけではない。その理由の1つは、レアアースの使用を避けるためだ。
どのレアアースにも、舌を巻くような印象的な名前がつけられている。EV駆動用モーターにレアアースを使用しているポルシェによると、「ネオジム」が最も一般的だが、「ジスプロシウム」や「テルビウム」も使われるという。しかし、レアアースの持続可能性に疑問があるのなら、なぜレアアースを使うのか?
理由は単純で、非常に強力な永久磁石を作れるからであり、一般的な鉄(フェライト)磁石よりもはるかに大きな磁場を発生させるのだ。ポルシェによれば、同社のモーターに使用されている磁石は、鉄に加えて約30%のレアアースで構成されているという。
基本的な鉄の磁石よりも小型・軽量であるため、永久磁石モーターは、電気巻線を使用するモーターよりも省スペースで軽い。
希少性に関してポルシェは、レアアースの中には鉛よりも豊富な物質もあるが、抽出や加工ははるかに難しいと言う。
レアアースが使われるのは、EVモーターが最初でも、唯一でもない。ICE車の触媒コンバーターにはレアアース(貴金属と混同してはならない)が使われているし、ガソリンやディーゼル燃料を精製する触媒にも使われている。
また、駆動用モーターと同じ理由で、車両全体に見られる小型電気モーターにも使用される。
さらに、センサーの製造やガラスや鏡の研磨など、普段わたし達が見ることのない舞台裏でも活躍している。その他、コンピューターのハードドライブ、LEDスクリーン、レーダーなどでも使われる。
初期のハイブリッド車に搭載されたニッケル水素バッテリーにはレアアースが使われていたが、リチウムイオンバッテリーにはレアアースは使われていない。