4. フォードマスタング・マッハE

フォードはミドルサイズ以上の乗用EVにやや出遅れたが、いずれにせよ、多くの人に愛されている「マスタング」というサブブランドを同社初のバッテリーEVに流用することで、さまざまな波紋を呼んだ。マスタング・マッハEは、背の低いマッスルクーペではなく、親しみやすい外観のクロスオーバーボディを持つ5人乗りモデルである。航続距離はなかなか印象的で、価格も中堅クラスといったところだ。

英国では4万ポンド(約720万円)強から購入可能だが、もっと安いライバルもいる。WLTPサイクルで610kmの航続距離を誇るエクステンデッド・レンジ仕様を求めるなら、5万ポンド(約900万円)近く必要だ。しかし、航続距離と価格の両方で高級ブランドのライバルを最大30%凌ぐ、使い勝手の良いファミリーカーである。

4. フォード・マスタング・マッハE
4. フォード・マスタング・マッハE

エクステンデッド・レンジの後輪駆動モデルでは、加速力で乗員の目をくらませることはない。その代わり、運転に満足感をもたらしてくれるのはシャシーである。純粋に楽しいかと問われると、ライバル同様に重すぎるし、ステアリングも人工的な感が過ぎる。また、マスタング・マッハE GTは確かに直線では速いし、その気になれば低速コーナーの立ち上がりでマッスルカーのようなギラギラしたアングルに仕立てることもできる。しかし、限界までプッシュすると腰砕けになってしまう。

「中身よりスタイル重視」なのではないかという懸念もあるかもしれないが、キャビンは実に広々として風通しが良い。たとえ見た目がやや想像力に欠け、質感が欧州のライバル車より1、2ランク劣るとしても。

5. フォルクスワーゲンID.4

ID.4は、ID.3に続いてMEBプラットフォームを使用したフォルクスワーゲン2番目のモデルである。ID.3よりも大きく、価格も高いが、世界のEV市場で支配的なプレーヤーになるために重要な役割を果たすモデルでもある。フォルクスワーゲンは、ティグアン並のサイズでトゥアレグに匹敵する実用性を提供できると主張している。それはが本当なら素晴らしい。

実際には、かなりうまくいっている。広い居住スペースがあり、531Lのトランクはティグアンより大きい。さらに良いことに、バッテリーを床下に配置することでパッケージング上有利になり、リアシートの広さはメルセデス・ベンツEクラスと同等。唯一の小さな欠点は、リアシートの座面が少し高く、ヘッドルームが制限されることだ。

5. フォルクスワーゲンID.4
5. フォルクスワーゲンID.4

バッテリーといえば、電気モーターの出力に対応した2種類の容量が用意されている。148psと170psのモデルには52kWhのユニットが、204psのモデルには77kWhのユニットが搭載され、WLTP航続距離は最大528kmに達する。デュアルモーター四輪駆動の265psのモデルや、最高出力299psを発揮する最上位モデルのID.4 GTXもある。「GTX」と聞くと「GTI」のイメージがあるかもしれないが、どちらかというとその性格は高速クルーザーに近い。

204psの標準モデルでもパフォーマンスは十分に快調で、大径ホイールだが乗り心地は非常に洗練されている。しかし、きちんと調整されたコントロールレスポンス、シャープな性能、移動中の成熟感など、冷たさを感じさせないだけのキャラクターはある。

ID.4は、すっきりと簡素化された直感的なEV体験を提供するが、インテリアの人間工学は少し簡略化されすぎている。雰囲気はとても魅力的だが、ほとんどの物理ボタンがなくなったため、使い勝手はあまりよくない。これは現代のフォルクスワーゲンによくある不満で、同ブランドは現在、その是正に取り組んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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