6. テスラモデルY

テスラ・モデルYは、売れ筋のモデル3のアスペクト比(縦横比)を変え、実用的に仕上げた兄弟車。全長はモデル3より50mm長いが、重要なのは全高が180mm高いこと。これによってキャビンスペースは大幅に拡大されているが、シャシー仕様とミニマルなインテリアはモデル3同様である。そしてもちろん、テスラの優れたスーパーチャージャー・ネットワークも利用でき、これだけでも多くの人にとって購入する価値があるだろう。

金銭面でいえば、エントリーレベルの後輪駆動車が導入されたことで、モデルY所有への予算的な障壁が5万1900ポンド(約940万円)に引き下げられた。シングルモーターだが、0-97km/h加速6.6秒のタイムと、462kmの公称航続距離(18インチホイール装着時)という突出した性能を得ることができる。

6. テスラ・モデルY
6. テスラ・モデルY

さらに遠くへ行きたいならロングレンジ仕様があり、最高出力440psで0-97km/h加速わずか5.0秒、1回の充電での航続距離は533kmとなる。最後に、激しいGフォースで家族を気持ち悪くさせても構わないのなら、514psのパワーと0-97km/h加速3.5秒を誇るパフォーマンス仕様もある。

モーターに関係なく、モデルYは十分な乗員スペースと明るい室内空間を備え、ミニマリスト的なインテリアはかなり見栄えがする。前後の収納スペースもたっぷりある。しかし、この価格帯で期待されるようなプレミアム感には欠ける。加えて、テスラはすべての車載機能を巨大なタッチスクリーンに集約することに固執しているため、モデルごとの個性に欠けるだけでなく、求める機能にアクセスするために何度も指を動かす必要があるなど、人間工学的にも難点がある。

ダイナミクスとしては、比較的クイックなレシオとかなり重めのステアリングでひたすら正確さを要求し、表現や調整の余地はほとんどない。固めのサスペンション・セットアップによりボディがなかなか落ち着かず、乗員を揺さぶるような動きが絶え間なく続く。この快適性の不足は、遮音性の低さによってさらに深刻化する。サスペンションからのノイズやタイヤからの轟音によって、EVドライブトレインの洗練された利点が台無しになってしまう。

結局のところ、モデルYは非常に有能な電動SUVではあるが、誰もが納得できるような高級SUVではない。

7. 日産アリア

日産が初代リーフを発売し、量産EVのパイオニアとなったことを考えると、後続モデルをラインナップに加えるのにこれほど時間がかかったのは驚きだ(商用車ベースのeNV200などもあるが)。それはさておき、満を持して導入した最新EVが、収益性の高いプレミアムクラスのSUVというのは当然の動きと言えるだろう。近年ますます競争が激化する電動SUVクラスにおいて、530kmというWLTP航続距離は大きな武器となるはずだ。

まず、アリアはモダンで洗練されたスマートな外観を持ち、インテリアは高級ブランドのライバルと比較しても遜色ない。目を引くデザインだけでなく、高級感のある素材がふんだんに使われ、心地よく上品な雰囲気を醸し出している。ダッシュボードの上部には、メーターとインフォテイメント用の2枚の12.3インチ・スクリーンが設置されている。フロントシート間のスライド式センターコンソールや、ダッシュボードからスライドして取り出せる便利な引き出しなど、気の利いた工夫も見られる。

7. 日産アリア
7. 日産アリア

ドライブトレインのレイアウトは、シングルモーター前輪駆動とデュアルモーター四輪駆動から選べる。前者は63kWhまたは87kWhのバッテリーから選択でき、それぞれ最高出力218psまたは242psを発揮する。「e-4orce」と呼ばれる四輪駆動モデルは、87kWhバッテリーのみ選択可能で、標準仕様で306ps、最上位モデルのパフォーマンス仕様では393psを発揮し、0-100km/h加速は5.1秒となる。

どの構成にせよ、アリアは落ち着いていて走りの能力も高いが、ドライバーの鼓動が高鳴るようなことはない。ステアリングは軽快で正確だが、ボディコントロールはややソフトでそわそわしており、コーナリング時には車体のロール軸よりも高い位置に座っているような感覚になり、傾き1つ1つを意識させられる。

アリアは初代リーフのようなゲームチェンジャーではないが、気に入る点はたくさんある。しかし、英国価格が5万ポンド(約900万円)弱からということで、日産がよほど好きでなければ購入に踏み切れないだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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