8. アウディQ4 eトロン・クワトロ

フルサイズのアウディQ8 eトロンをファミリーカーとして購入するのはちょっと……という方には、小型のQ4 eトロンがある。通常のSUVボディとクーペ風のQ4スポーツバックeトロンがあり、フォルクスワーゲン・グループが開発したMEBプラットフォームを採用している。四輪駆動も選択でき、300psを超えるパワーを発揮する。しかし、今回上位にランクしたフォルクスワーゲンID.4スコダ・エニアックiVのような安価な兄弟車とは、メカニカル面で多くの共通点がある。

パグ鼻のルックスや、きらびやかだが少し地味なキャビンの質感など、欧州の消費者を少し遠ざけているように思える部分もあるが、AUTOCARが試乗したところ、ネガティブな印象は十分和らいだ。Q4 eトロンは、洗練された高性能な内燃エンジンによって付加価値を高めることができなくなり、シャシー技術がブランド間で共有されるようになったEV時代に、高級ブランドの差別化がいかに難しいかを顕著に示している。最も航続距離の長い仕様では480kmに迫る航続距離を誇り、信頼に足る1台ではあるが、ダイナミクスでも、表面的に異なるだけのデザインでも、インテリアの高級な雰囲気でも、うまく差別化できていない。

8. アウディQ4 eトロン・クワトロ
8. アウディQ4 eトロン・クワトロ

一部の高級EVよりもQ4 eトロンの方が選びやすいものの、フォルクスワーゲン・グループのMEBプラットフォームによる切り貼り感は否めない。アウディは、これからのEV市場で自社製品の優位性を示したいのであれば、もっとうまくやらなければならない。

9. メルセデス・ベンツEQB

7人乗りの電動SUVを買うなら、今のところ選択肢は厳しく限られている。これから増えていく見込みはあるものの、現時点での数少ない選択肢の1つがメルセデス・ベンツEQBだ。同じく7人乗りのテスラモデルXよりはるかに小さいが、価格も約半分である。

基本的には内燃エンジン搭載のGLBのEV版であり、モーターとバッテリーによって多用途性をあまり損なわないように、丁寧にパッケージされている。例えば、3列目シートの広さはGLBと同じで、大人は短距離の移動にしか耐えられないが、子供であればあまり問題はない。2列目シートもスライド式のため、乗員数と荷物量によってはレッグルームを広くとることができる。

9. メルセデス・ベンツEQB
9. メルセデス・ベンツEQB

インテリアの仕上げはよく、高級感があり、ダッシュボードに設置されたTFTスクリーン(優れたMBUXシステムを搭載)がハイテクな雰囲気を醸し出している。

快適性と洗練性は良好で、ドライビングも楽しさよりもリラックスすることを優先させている。最高出力228psのEQB 300と最高出力292psのEQB 350(どちらも四輪駆動)があるが、同じようにデュアルモーターを搭載するライバルの速さには及ばない。

速さといえば、150kWの充電速度が主流のこのクラスで、EQBの上限が100kWなのは残念だ。最大航続距離が419kmというのも特筆すべきことではないだろう(充電を待っている間に、一筆したためることはできるかもしれないが)。

価格は5万5000ポンド(約1000万円)弱からで、これはテスラ・モデルYと同程度の金額であり、スコダ・エンヤクiVはおろか、アウディQ4 eトロンよりもかなり高い。

7人乗りが必要なら、使い勝手のいいEQBにライバルはほとんどいないが、そうでなければもっといい選択肢がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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