持続可能タイヤは何からできている? 「燃費性能」だけではない環境への配慮とは
公開 : 2023.07.25 06:05
タイヤの「環境性能」といえば、真っ先に思い浮かぶのは燃費性能でしょうか。しかし、メーカー各社は今、素材や製造方法にまで配慮した持続可能なタイヤ開発に力を入れています。
「もみ殻」や「たんぽぽ」まで 環境負荷の低減へ
コンチネンタルやミシュランといった主要タイヤメーカーは、2050年までにタイヤ生産を根本的に「クリーン化」することを目指している。AUTOCARでは以前も、タイヤに持続可能(サステイナブル)な素材を使う動きに注目したことがある。
これは基本的に、タイヤの主成分(合成ゴムとカーボンブラック)に使用される石油ベースの製品を、バイオマテリアルやリサイクル・カーボンブラック、スチール、樹脂に置き換えるというものだった。
さらにはタンポポ、リサイクル・ペットボトル、もみ殻をはじめとする食品産業の副産物など、通常は埋め立てるしかないような素材も代替品として研究が進められている。
さて、ここからが本題だ。以前取り上げたときよりも、タイヤ開発はさらに進展した。コンチネンタルは最近、持続可能な素材を「高含有」したタイヤを初めて市場投入すると発表した。
ウルトラコンタクトNXTと呼ばれる同社のタイヤは、ICE(内燃エンジン)車とEVの両方に適合し、最大65%が再生可能素材またはリサイクル素材から作られている。念のために補足しておくと、このうち持続可能素材の28%は、国際持続可能カーボン認証(ISCC)の「マスバランシング」によって認証されている。
再生可能素材は32%を占め、残りの5%はリサイクル素材である。再生可能素材には、石油由来の原料ではなく、木材や製紙産業からの残渣を使用した樹脂が含まれる。
タイヤの性能面で重要な役割を果たすのがシリカという素材で、グリップ、転がり抵抗、寿命に影響を与える。シリカは、1990年代からカーボンブラックの一部代替品として使用されており、従来は砂から作られる。
しかし、砂からシリカを作るには1400℃もの高温が必要で、エネルギーを大量に消費する。一方、もみ殻の灰からシリカを製造する場合、必要な熱エネルギーは100℃程度とはるかに少ない。
再生ペットボトルはポリエステル繊維の製造に使用されるため、原料が石油系であるという意味では再生可能ではないが、ペットボトルが埋立地に捨てられたり焼却されたりするのを防ぎ、循環プロセスを作ることができる。サイズにもよるが、1本のタイヤには9本から15本のボトルが使用される。ボトルから作られたポリエステル繊維は、タイヤのカーカスの内部で使用される。
通常、炭化水素を原料とし、合成ゴムの製造に使用される石油由来のブタジエンガスは、エタノールから製造できるバイオブタジエンに置き換えられる。エタノールはバイオマスを発酵させることで比較的簡単に作ることができる。
タイヤの重要な成分であるカーボンブラックは、通常、高温で石油やガスを燃焼させて粒状の粉末を作る。しかし、古いタイヤからリサイクルされたカーボンブラックはその影響の軽減を考慮し、ISCC認証の対象の1つとなっている。
ウルトラコンタクトNXTは今月欧州で発売される予定で、決してニッチな製品ではなく、大衆向けの製品である。テスラ・モデル3、メルセデス・ベンツEQA、フォルクスワーゲン・ゴルフなどが対象車種だ。