日産スカイライン350GTハイブリッド・タイプP
公開 : 2014.03.26 18:20 更新 : 2017.05.29 19:27
ベースとなっている北米仕様のインフィニティQ50には3.7ℓV型6気筒や2.2ℓ4気筒のディーゼル・ユニットも用意されているけれど、残念ながら日本には導入されない。スカイラインはいわゆる“一番いいやつ全部付き”だけに、車体価格は450万円から上と、歴代モデルと比べても価格帯はかなり上昇している。この最上級グレードのみを日本市場に導入した理由について訊ねてみたら、今やスカイラインはプレミアムスポーティセダンであり、競合車種としてはドイツ勢を中心とした輸入車を考えている。それらの競合車種においてハイブリッドの存在は当たり前で、動力性能と省燃費性を両立させるファクターとして重要という判断からだそう。プレミアム感を強調するために、あえてトップモデルのみを導入したということらしい。
そしてパワートレインはフーガと共通ながら、新型スカイラインには量産車世界初の機能が備えられている。“ダイレクト・アダプティブ・ステアリング”と呼ばれる電子制御式ステア・バイ・ワイヤがそれだ。ダイレクトと名はついているものの、ステアリングシャフトと前輪は機械的に繋がっておらず、ステアリングを切った量をコンピュータが感知し、電気信号を送ってタイヤに切れ角を与えるというもの。直接に繋がっていないので、悪路を走るときなどに不快な振動が伝わりにくいというメリットがあるうえ、モーターのアシスト量を変化させることで低速域においては少ない動作でも切れ角を大きくして取り回しを良くすることができる。今回の試乗では、閉鎖されたスペースにパイロンスラロームのコースが接地され、その効果を実際に体験することができた。
一般路に出る前に、そのパイロンスラロームを体験する。少ないステアリング操作でも大きな切れ角度を与える、というのは40km/hほどのスラロームでも充分に体験できる。簡単に言うとステアリングを右に「5」切ったつもりが、クルマが「6」あるいは「7」を動こうとする。これにより軽快な身のこなしを実現できているのは明らかなのだけど、ある一定を過ぎると急にハナ先が内側を向く感じには慣れが必要かもしれない。普通に余裕をもって走っていたつもりが、恥ずかしながらパイロンスラロームではリヤタイヤでタッチしてしまった。ホイールベースが短く、キャスターが立っているオートバイの操縦感覚に似ている、といえばわかりやすいか。
試乗コースをワインディングに移すと、スカイラインはまさに本領発揮。ハイブリッドのシステム合計出力は364psもあるので、もはやこちらがGT-Rを名乗っても良いんじゃないかと思わせるほどのパワーで箱根の山を駆け上って行く。ペースを上げれば上げるほどステアリング操作とクルマの動きがリンクして、車体を小さく感じるようになるのは、すべてが変わってしまったと思いがちななかで“スカイラインらしさ”の継承をもっとも感じる部分だ。プレミアムセダンといいつつも、いちばん居心地の良い場所はドライバーズシートであり、そこから見える景色は変わらないスカイラインのそれだ。
(文・佐橋健太郎 写真・花村英典)
日産スカイライン350GTハイブリッド・タイプP
価格 | 486.36万円 |
0-100km/h | na |
最高速度 | na |
公称燃費(JC08モード) | 17.8km/ℓ |
CO₂排出量 | 130g/km |
車両重量 | 1770kg |
エンジン形式 | V6DOHC, 3498cc |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
エンジン最高出力 | 306ps/6800rpm |
エンジン最大トルク | 35.7kg-m/5000rpm |
圧縮比 | 10.6:1 |
変速機 | 7段A/T |
モーター出力/トルク | 68ps/29.6kg-m |
システム出力/トルク | 364ps/― |
馬力荷重比 | 206ps/t |
全長 | 4790mm |
全幅 | 1820mm |
全高 | 1440mm |
ホイールベース | 2850mm |
燃料タンク容量 | 70ℓ |
荷室容量 | 400ℓ |
サスペンション | (前)ダブルウイッシュボーン |
(後)マルチリンク | |
ブレーキ | (前)Vディスク |
(後)Vディスク | |
タイヤ | 225/55RF17 |