2台しかない電動ラリーカー、火災で消失 ランチア・デルタ・エボeRX 充電中に出火
公開 : 2023.07.26 18:05
世界ラリークロス選手権(WRX)に参戦していた2台のEVが、充電中に出火するアクシデントが発生。この火災でセバスチャン・ローブ氏らが乗る予定だった2台が全焼しました。FIAは出火原因について調査を行っています。
パドックで出火 イベント開催中止に
ランチア・デルタ・インテグラーレをベースとしたラリー参戦車両「デルタ・エボeRX」が、7月21日に英国リッデンヒルのサービスエリアで発生した火災によって全焼するアクシデントがあった。この影響で、世界ラリークロス選手権(WRX)の英国ラウンドが中止となった。
チームのスペシャル・ワン・レーシングは、WRXのトップカテゴリーであるRX1eに2台のデルタ・エボeRXを2台出走させていた。ドライバーは、9度の世界ラリーチャンピオンに輝いたセバスチャン・ローブ氏とゲラン・シシェリ氏である。
デルタ・エボeRXは、伝説的なラリーカーとして知られるデルタ・インテグラーレを改造したEVで、1987年から1992年にかけてWRXに参戦したオリジナル車両を彷彿とさせるマルティーニ風のカラーリングが施されていた。
スペシャル・ワン・レーシングは2023年シーズンのWRX第4戦のために英ケント州リッデンヒルに滞在していたが、21日早朝にパドックで火災が発生した。同チームによると、08時45分頃にローブ氏の車両から出火し、すぐにシシェリ氏の車両に燃え移り、その後チームの作業用トラックの1台が火に包まれたという。
消防隊が現場に駆けつけたが、3台とも全焼した。この火災による負傷者はいなかった。
スペシャル・ワン・レーシングは声明で次のように述べた。
「この火災は、誰も車両で物理的な作業していないタイミングで、(出火の)数分前から行われていたパワートレインの充電中に発生しました。FIA(モータースポーツの統括団体)は、出火原因を特定するために調査を開始しています。現段階では、スペシャル・ワン・レーシング・チームのスタッフにも、そのパートナーのスタッフにも操作ミスはなかったと断言できます」
WRX主催者は当初、火災を受けて7月22日のRX1e開催を中止したが、FIAのスチュワード(レースの審判)は同日夜に「安全上の理由」から同クラスのイベントを「永久的に中止」することを決定した。
RX1e中止の決定について、スチュワードは声明で「映像証拠によると、火災はチームエリアで充電中のマシンのバッテリーから発生しました。チームメンバーの極めて迅速な判断によって、彼らが負傷を免れたことは明らかです」と述べている。
スチュワードによると、ケント州消防局、リッデンヒルのスタッフ、主催者、そしてWRXで使用されるバッテリーを製造しているクライゼル・エレクトリック社の協力を得て、FIAが事故の原因について「緊急調査」を行ったという。
しかし、「火災につながった故障の根本的な原因を特定するほどには調査は進んでいない」とし、「適切なレベルの安全性を保証」しながらイベントを実施することは困難だという見方を示した。
さまざまな代替案も検討されたが、スチュワードによれば、「極めて危険な火災の原因についての推測に基づくもの」であるため、除外されたという。
さらに、バッテリーを製造したクライゼル・エレクトリック社は、調査中であるため「システムにおいて適切なレベルの保証を提供することができない」と述べている。
RX1eクラスは中止されたが、他のクラスは予定通りリッデンヒルで7月23日にレースを行った。
スペシャル・ワン・レーシングは、マシンと多くの機材がなければ、今シーズンの参戦はできないだろうと語っている。
同チームは、「写真と映像しか残っていない2台の素晴らしいデルタ・エボeRXへの反響を誇りに思います」と付け加えた。
画像 電動化された伝説のラリーカー、火災で全焼【スペシャル・ワン・レーシングのランチア・デルタ・エボe RXを写真で見る】 全6枚