エンジン車禁止に揺らぐ英国 「国民に不当な影響与える」環境政策、トーンダウンか
公開 : 2023.07.26 18:25
2030年に内燃エンジン車の新車販売禁止を計画する英国ですが、緩和措置を示唆するリシ・スナク首相の発言が波紋を呼んでいます。一部の自動車メーカーに対する免除なども検討中と予想されます。
「国民負担増やさない」 波紋を呼ぶ首相発言
英国政府の重鎮の1人である保守党議員のマイケル・ゴーヴ氏は、2030年からガソリン車とディーゼル車の国内新車販売を禁止する政策の変更について真っ向から否定し、「方針は変わらない」と明言した。
この発言は、政府の気候変動対策に疑問を投げかけたリシ・スナク首相の発言を受けてのものだ。
気候変動に焦点を当てた「国民に不公平な影響を与える」新法はトーンダウンするとの噂が高まる中、スナク首相は7月24日の講演で、ICE(内燃エンジン車)の禁止が当初の予定通り実施されるかどうかを明確にしなかった。
その上で、英国は「ネットゼロに向けて前進する」としながらも、「人々の生活に不必要に手間とコストを増やさない」「相応の現実的な方法で」前進するとし、「(負担増は)わたしの関心事ではないし、そうする用意もない」と述べた。
しかし、翌25日の朝、ゴーブ氏はBBCラジオ4の番組『Today』で、これは事実ではないと語った。
2030年にICEの新車販売を禁止することは、人々に過剰なコストを課すことになるのではないかという質問に対し、「そうではありません」と彼は答えた。
「わたし達は、2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売をゼロにするという方針を維持することを約束します」
「その方針を変えたいと思う人がいるのは理解していますが、しかし、方針は変わりません」
スナク首相の発言は、主に保守党の右派議員からなる新グループの閣僚らが、いくつかの環境政策について再考を求めた後のことだった。これに対し、スナク首相は次のように述べた。
「わたしは英国国民のために立ち上がる。なぜなら、インフレが進む時代を生きていることも認識しているからです。インフレは家計や家族の生活費に影響を及ぼしています。わたしはそれを増やしたくない。もっと楽なものにしたいのです」
英国政府の現在の計画では、2030年からハイブリッド車とEVのみの販売が認められ、2035年からはEVのみの販売となる。ICEの禁止は、自動車業界にとって史上最大の政策と言っても過言ではない。
禁止令は当初は2040年に施行予定だったが、政府が掲げる2050年のネットゼロ目標に向けた取り組みの一環として2030年に前倒しされた。この禁止令へのコミットメントについて尋ねられたスナク首相は、次のように答えた。
「もちろん、ネットゼロはわたしにとって重要です。だから、そう、わたし達はネットゼロの目標に向かって前進し続け、エネルギー安全保障も強化するつもりです」
しかし、同時に他の手段も検討すべきであるとも述べている。
「ここ1、2年の出来事は、原子力発電や洋上風力発電など、国産エネルギーへの投資の重要性を示していると思います。それこそが国民が望んでいることであり、わたしはそれを実現するつもりです」
この発言の数日前、7月19日にはインドの自動車メーカーであるタタが英国サマセット州に総額40億ポンド(約7200億円)を投じて巨大バッテリー工場を建設すると発表したばかりだ。