揉め事が絶えないロンドン環境政策 選挙敗北に提訴、でも止めない ULEZ拡大、8月29日実施へ
公開 : 2023.07.31 06:45
強引な環境政策、選挙の敗因にも
しかし、カーン市長は現在、反対派の意見に「耳を傾けている」と言われている。
市長室の広報担当者はAUTOCARに寄せた声明の中で、次のように述べている。
「市長は、ULEZを拡大するという決定は非常に困難なものでしたが、毎年約4000人のロンドン市民が大気汚染のために早世し、子供たちは肺の発育不全のまま成長し、何千人もの人々が癌、肺疾患、認知症、喘息といった人生を変えるような病気を発症している中で、何もせずに傍観することはできないと明言してきました」
「ロンドン郊外を走っているクルマ10台のうち9台は規制に準拠しており、1ペニーも支払う必要はないでしょう。低所得者、慈善団体、中小企業、障害を持つロンドン市民、児童手当を受給している人など、影響を受けた人なら誰でも、何千ポンドもの支援を受けることができます」
「サディク(・カーン市長)はULEZの拡大にコミットしていますが、常に耳を傾けており、ULEZの拡大がロンドン市民に与える影響を緩和しつつ、大気質と気候危機に取り組む方法について、どんな新しいアイデアも喜んで検討しています。彼はこのプロセスを通してロンドン市民の声に耳を傾けてきましたが、これからもそうするつもりです。彼はすでに、今月末からスクラップ・スキームの適用を拡大するために多くの変更を行いました」
スターマー氏はこう語った。「グリーン・コミットメントに関しては、実行すべきかどうかという問題ではなく、当然ながら実行する必要があります。そのためにも議論が必要です」
また、労働党副党首のアンジェラ・レイナー氏は、「有権者の声に耳を傾けなければ、選挙には勝てない」という事実を証明するのが、今回のアクスブリッジ・サウスライスリップ選挙区での敗北だと述べた。
レイナー氏は、都市の大気質を改善する必要性は認めつつも、影響を受けたドライバーは「適切な補償と支援」を受けなければならないとしている。
ULEZ拡大の実現性をさらに不透明にしているのが、保守党政権の動向だ。英国政府は、2030年から内燃エンジン車の新車販売を禁止するという自らの計画に疑問を投げかけているのである。
リシ・スナク首相は最近、カーボン削減のために行われるいかなる措置も「均等かつ現実的」でなければならず、「国民に不当な影響を及ぼしてはならない」と発言し、波紋を呼んだ。
スナク首相は、2030年の内燃エンジン車禁止が議論の対象となることを公式には認めていないが、ジェイコブ・リース=モグ前産業戦略大臣は、禁止措置の廃止が「選挙で成功する」可能性につながることを示唆した。