商用車と一線を画す走り味 フォルクスワーゲン・マルチバン 長期テスト(2) 撮影車に最適

公開 : 2023.08.06 09:45  更新 : 2023.08.24 09:15

VWの7シーター・ミニバン、マルチバン。初代タイプIIをご先祖に持つ最新版の実力を、英国編集部がじっくり確かめます。

積算2万1468km 試乗車の撮影車として最適

先日は、フォルクスワーゲン・マルチバンに同僚とフォトグラファーを乗せ、沢山の機材を積んで、グレートブリテン島の西部、ウェールズ地方へ向かった。このクルマらしい使われ方だと思う。

その後、南東へ下りバンベリーへ移動。山間での撮影を時間に追われながらこなした。最近までクルマから降ろしていた2列目と3列目のシートは戻していたから、スタッフの移動にも活躍してくれた。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

シートを装備すると荷室として使える空間は狭まるものの、トノカバーを展開したり、座面下に押し込むことで、貴重な荷物を外から見えなくできる。バッグが広いフロアを滑りまわる心配もない。

この仕事をしていると、試乗車の走行シーンの撮影へ関わることが多い。マルチバンのリアシートは、後ろ向きに回転できる。フォトグラファーは普段通りにシートへ座り、シートベルトを締め、大きなテールゲートを開けば後ろを走る車両へカメラを向けられる。

車内は広いから、それ以外の荷物は別のシートに載せたままで大丈夫。筆者はこんな撮影を数え切れないくらいこなしてきたが、マルチバンほど好適だと感じたクルマは今までなかった。これ以外の仕事にも、きっと活躍するに違いない。

駆動用バッテリーの便利な電力

プラグイン・ハイブリッドであることも、このクルマにとってはメリットが大きい。移動中は駆動用バッテリーの利用を控えつつ、目的地の駐車場ではその電気で車内のエアコンを動かせる。サポート車両としてぴったりだ。

エアコンは強力で、早朝に防寒着を着たまま車内で過ごしていると、暑くて汗ばむほど。キーを抜く度にEVモードへ切り替わるため、都度ハイブリッド・モードへ戻す必要があるのは少々手間だが、極めて有能なワゴンであることは間違いない。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

積算2万3480km 実用的な電動スライドドア

フォルクスワーゲン・マルチバンで、グレートブリテン島の西部、エブブ・ベールへ立ち寄った。ここには、復活を目指すスポーツカー・メーカー、TVRの工場がある(あった)ためだ。

約2年前に訪れた時は、間違いなく同社の新工場として活気があった。しかし今回はまったく人影がなく、放棄された状態に見えた。ゲート前の看板には、今後の計画は決まっておらず、新しい拠点も未定だと記されていた。施設は荒れていない様子だったが。

TVRの工場前に停まるフォルクスワーゲン・マルチバン
TVRの工場前に停まるフォルクスワーゲン・マルチバン

少し寂しい気持ちになっても、マルチバンの車内は広く快適。誰かが飲み残したミルクココアが残っていても、すぐには発見できないほど。

車内に甘い匂いがこもっていても、スライドドアは離れた場所からキーで開閉でき、換気は簡単。電動スライドドアは車重を増やしてしまう装備ながら、家族での利用が前提のミニバンとして高い実用性に繋がっている。

沢山の荷物を運ぶ時は、特に便利。両手に荷物を抱えたまま自宅へ入っても、室内からスライドドアを閉じられる。普段は、手で閉めた方が早いけれど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト フォルクスワーゲン・マルチバンの前後関係

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