自動車部品大手ZF 次世代EVの出力/効率を大幅向上させる最新テクノロジー公開
公開 : 2023.07.31 18:25
無駄の少ない高効率のモーター技術で、次世代EVの性能向上を目指す。ドイツの自動車部品大手ZF(ゼット・エフ)は、EV向けに開発された最新テクノロジーを公開しました。市販車にも導入予定です。
ムダの少ない効率設計 EVの性能向上目指す
パワフルかつコンパクトな800Vの電気モーター、高効率の減速機、インテリジェント・サスペンション・ダンパーといったテクノロジーは、次世代EVのパフォーマンスを飛躍的に向上させる可能性を秘めている。
世界有数の自動車部品サプライヤーであるZF(ゼット・エフ)社が開発した第3世代電動パワートレインは、すでに新型ロータス・エレトレなど市販車への導入が予定されている。
ZFの新型モーター「EVSys800」は、既存の設計よりも30%高い70Nm/kgというトルク密度を持つ。同社の電動モビリティ部門責任者であるオトマール・シェラー氏は、「このモーターは80kgと非常に軽量でコンパクトでありながら、ピーク定格出力は300kW(408ps)です」と語っている。
このコンポーネントの一部は、「EVbeat」と名付けられたポルシェ・タイカン(後輪駆動モデル)をベースにした技術デモカーでシミュレートされている。EVSys800は、重量を抑えるために全合金ケーシングを使用する。内部では、一般的なヘアピン式巻線から編み込み式巻線に変更され、200か所のレーザー溶接が不要になったことでパッケージ・サイズが10%縮小され、出力も50%向上した。
設計の基本は、ステーターを冷却し、廃熱を「TherMas」ヒートポンプに利用する直接導体冷却による新しい熱管理システムである。
その結果、EVSys800はピーク出力の75%を長時間維持できるという。ZFによれば、定格200kWの一般的なモーターは75kWでしか連続走行できない可能性があるという。「非常に優秀な場合でも、定格出力の50%の連続出力しかありません」とシェラー氏は言う。
「その理由は冷却です。90%の効率でも、200kW(272ps)のモーターでは10kW(14ps)を手放すことになる。10kWあれば、マイナス20℃の冬でも2軒の家を暖めることができます」
ZFの第3世代電動パワートレインのもう1つの特徴は、新しいプラネタリーギア式同軸減速ドライブである。モーターによる減速機能とディファレンシャル機能の両方を備え、音響的に最適化されたギア設計により静粛性が高いという。
ZFはまた、「Cubix」と呼ばれる集中型ソフトウェアの制御下で、電気モーターとその駆動コンポーネントを連携させる新しいインテリジェント・サスペンション・システムを開発した。ロータス・エレトレにも同システムが採用され、高品質なロード・ダイナミクスの実現を目指す。
Cubixは、ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV、ソフトウェア定義車両)という概念のもとで「シャシー2.0」とも呼ばれており、事実上、車載のスーパーコンピューターとなる。液体冷却、インテリジェント・ダンパー、ステアバイワイヤ、ブレーキバイワイヤを制御するために最大1500TOPS(1秒あたり1500兆回)の演算能力を備え、同時に電気モーターの駆動制御にも統合される。このCubixは、ZF以外の他社製コンポーネントを統合することもできるという。
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