自動車部品大手ZF 次世代EVの出力/効率を大幅向上させる最新テクノロジー公開
公開 : 2023.07.31 18:25
ZFのテクノロジー、モーターだけじゃない
【イージー・ターン】
開発に3年を費やしたというマルチリンク・フロントアクスル「イージーターン」は、独自のサスペンション・ロワーアームとキングピンを備え、80度以上の操舵角を実現する。(一般的な操舵角は45度)。BMW i3の場合、最小旋回直径は10mから6.8mに短縮され、後輪操舵と組み合わせると5.7mになる。まるで、後輪を中心に旋回しながら横に動いているように見える。
特に大型セダンやSUVの場合、操縦性の向上は目を見張るものがある。ただし、フロントドライブシャフトは極端なロックに対応できないため、後輪駆動車のみの対応となる。自動車メーカーも興味を示しているが、量産化に漕ぎつけるにはあと2年のエンジニアリングが必要だ。
【スマート・シャシー・センサー】
ロアボールジョイントに取り付けられたセンサーが、前輪のたわみを正確に測定。これにより、くぼみなどの路面状況や、縁石への衝突など大きな衝撃に関する詳細情報を取得する。ZFは路面データをクラウド経由でナビマップに重ね合わせることで、悪路の事前警告を行い、よりスムーズなルート選択ができるようになる未来を見ている。こうしたデータは、タクシー会社やカーシェアリング事業者のメンテナンス、安全監視に役立つかもしれない。
【ヒートベルト】
今年初めのCESで初公開された「ヒートベルト」は、数秒で設定温度に達するため、電気毛布のように素早く乗員を暖めることができる。シートベルトの生地に高抵抗のワイヤーが織り込まれており、乗員に熱エネルギーを集中させることで、エアコンの負担軽減を目的としている。ベルト1本あたりの定格電力はわずか68Wだが、車両全体のHVACシステムは3.5kWを使用する。例えばBEVでは、HVACシステムの小型化によってバッテリーの消耗を抑えることができる。
【TherMas BEV HVACシステム】
「TherMas」は、バッテリーからの廃熱を利用する小型・軽量・高効率のヒートポンプである。ZFは、そのCOP効率の高さを強調している。「1kWの入力で2kWの出力が得られます。これは自動車では新しいことです」
TherMasは冷媒にプロパンを使用しており、低温での効率が10%向上する一方で、重量は最大17kg軽減されるという。外部のパイプや継手に邪魔されないデザインのため、大きさは靴箱2つ分ほど。
【パッシブセーフティ技術】
5つの新機能を搭載した先進のシートベルト技術。32ビットのマイクロプロセッサーによって制御され、触覚による警告や、着座位置がずれた乗員への対処が可能な、電動ベルト巻き取り装置が特徴である。眠気センサーと連動し、ベルトをリズミカルに揺らすことでドライバーを起こすよう設計されている。また、急ブレーキ時やエアバッグの膨張前に乗員の着座位置がずれていると、巻取り装置がベルトを強力に巻取り、乗員を正しい位置に引き戻すという。
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