EV販売が鈍化 頭打ちの要因は「消費者の関心薄れ」 雲行き怪しい英国のEVシフト

公開 : 2023.08.01 06:25

充電コストの低減は有効か?

英国の有力な業界団体である自動車製造販売協会(SMMT)は、現在の経済状況を踏まえ、若干異なるアプローチを提唱している。同協会のマイク・ホーズCEOは、一般家庭での充電にかかる付加価値税(VAT)が5%であるのに対し、公共施設での充電には20%かかる点を指摘し、是正に向けたロビー活動を展開している。

「同じ量のエネルギーを補給するのに、VATが家庭の4倍というのは不公平です。VATを引き下げることで、政府はこの問題に対処するだけでなく、移行をやり遂げるという意思を改めて示すことになるでしょう」

充電コストをさらに下げるべきという声がある一方、内燃エンジン車の禁止を延期すべきという議論はほぼ見られない。
充電コストをさらに下げるべきという声がある一方、内燃エンジン車の禁止を延期すべきという議論はほぼ見られない。

EVロビー団体FairChargeのクエンティン・ウィルソン氏は、当初の提唱者であり、SMMTの意見に熱烈な支持を寄せている。

「わたし達は、このテーマについて財務省と3回も直接会談しました。閣僚たちにも会ってきました……しかし、イースター島のモアイ像に自分の趣味について説明するようなものです。政府関係者でEVを運転している人に会うのはまれで、今日に至るまで、彼らは興味を示していません」

FairChargeの試算によると、VATの引き下げにより財務省は年間3800万ポンド(約70億円)の損失を被ることになるが、これは近年、燃料税を合意された倍率から引き下げるために「費やした」という20億ポンド(約3660億円)に比べれば、ほんの数%に過ぎない。

ウィルソン氏はまた、燃料業界が減税後に消費者に過大請求したとされる10億ポンドとは対照的に、EV充電業界は節約分を即座に消費者に還元することにすでに合意していると強調する。

SMMTのホーズ氏は、多角的なアプローチが必要だと言う。「インフラ、規則、送電網、地方自治体の協力など、障壁を取り除くためにあらゆる手段を講じるべきです」

しかし、EV販売促進のために対策が必要であることには誰もが同意しているが、2030年/2035年の内燃エンジン車・ハイブリッド車の販売禁止を延期すべきだというメディアの主張を受け入れる者はいない。

「業界は性能を向上させた新製品に何十億も投資してきました。彼らは、2030年でもそれ以降でもなく、今すぐそれらのクルマを売りたいのです」とホーズ氏。

これは、英国の公共充電事業者を代表する業界団体ChargeUKのイアン・ジョンストン会長も同じ意見だ。同氏は、期限を明確にすることが重要だと言う。「2030年の禁止は重要です。業界と投資家に保証と信頼を与え、インフラを迅速かつ効果的に展開できるようになります」

「それは、英国のネット・ゼロ目標の達成を助けることになり、ひいては質の高い持続可能な雇用を創出し、地球に有害な排出物を削減し、わたし達が呼吸する空気から健康に有害な微粒子を取り除くことにつながるのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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