ザ・グランドツアラー ベントレー・コンチネンタルGT フェラーリ612 スカリエッティ アストン マーティンDB9 3台比較 前編

公開 : 2023.08.13 07:05

2基の狭角V型6気筒エンジンを合体

チーフエンジニアを務めたのは、ウルリッヒ・アイヒホルン氏。フェートンの開発を率いた人物でもあり、ベントレーは初めてだったとしても、コンチネンタルというモデルが担う重要性は不足なく理解していた。

発表当時、アイヒホルンはAUTOCARへ次のように説明している。「真のグランドツアラーを作ることで、ブランドを創業したWO.ベントレー氏の価値観を継承したいと考えました」

ベントレー・コンチネンタルGT(2003〜2011年/英国仕様)
ベントレー・コンチネンタルGT(2003〜2011年/英国仕様)

「クーペというフォルムが、ベントレーの新しいスタイルを最も端的に表現できると信じています。往年のブルートレインやコンチネンタルRなど、偉大なモデルとのつながりも備わっています」

実際には、2003年のベントレーがハードウエアの多くをフォルクスワーゲンと共有するという事実から、逃れることはできていなかった。しかし、その手法を選ばなければ、現実的なコストでラグジュアリー・グランドツアラーを作ることは不可能でもあった。

全長はフェートンより250mm短く、全高は60mm低いが、車重は同等の2385kgと軽くなかった。それでも、スタイリッシュな2+2のクーペは大きな反響を集め、約4000台もの先行注文が寄せられた。

ボンネット内には、フォルクスワーゲン・グループが誇るW12エンジンが収まった。1つのクランクケースの上に、VR6型という狭角V型6気筒エンジンのシリンダーブロックを2基並べた構成で、排気量は5998cc。実際、シリンダーはW型に配置されていた。

アウディA8譲りの四輪駆動システム

吸気は2基のターボチャージャーで圧縮され、空対空インタークーラーで冷却。最高出力560ps/6100rpm、最大トルク66.1kg-m/1600rpmという、豊満な動力性能を発揮した。

当時のAUTOCARが試乗で計測した記録では、0-97km/h加速に要した時間は4.9秒。最高速度は315.4km/hに届いている。

フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)
フェラーリ612 スカリエッティ(2004〜2011年/英国仕様)

前後長が比較的コンパクトなW12エンジンのおかげで、アウディA8譲りの四輪駆動システムを組み込むことも可能だった。フロント側のデフは、6速ATに内蔵。サスペンションは、コイルスプリングより軽量だとうたわれた、エアスプリングが採用された。

フロント・ブレーキディスクの直径は、405mmと巨大。当時の量産車としては、最大径だと主張された。

一方、その頃のフェラーリは2+2のグランドツアラーとして456GTを提供していたが、初期型の登場は1992年と時間が経過していた。ユーザーが多様化するなかで、より実用性の高いモデルが必要にもなっていた。

そこで開発されたのが、612 スカリエッティ。スタイリングを手掛けたのは日本人デザイナーの奥山清行氏で、456GTより139mm長く、37mm広く、44mm背の高い、2ドアボディが描き出された。

荷室は25%拡大され、ゴルフクラブのフルセットを2つ運べた。北米市場では、重視される機能の1つだった。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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