大きな期待を背負う電動SUV 新型 ホンダe:Ny1へ試乗 価格と航続距離がネック

公開 : 2023.08.03 08:25

走行時の快適さではモデルYを凌駕

市街地では、不足ないパワーデリバリーと軽快なステアリングで、気持ち良く運転できる。サスペンションはしなやかで、路面の凹凸を巧みに吸収。乗り心地は全般的に優れるといっていい。走行時の快適さでは、テスラ・モデルYを凌駕する。

今回の試乗はノルウェー・オスロとその周辺となったが、入り組んだ路地も、路面電車の線路も、未舗装の裏道も、まったく意に介することはなかった。

ホンダe:Ny1 アドバンス (欧州仕様)
ホンダe:Ny1 アドバンス (欧州仕様)

そのまま、フィヨルドを巡るカーブが続くルートへ足を伸ばしたが、ホンダが意図したという「楽しく自信を想起させるような運転体験」へは、完全には迫れていない様子。特に軽くない車重を、タイトコーナーで実感させる。

全体的にアンダーステア傾向で、キアEV6のような身のこなしまでは得ていない。むしろインテリアと同様に、快適性を重視したように思える。

e:Ny1のシートはクッションが肉厚で座り心地は良好。リアシート側には、身長の高い大人も長時間過ごせる空間がある。ステアリングホイールは、人間工学的に望ましい位置へ伸びる。内装の素材は上質で、ボタンのタッチも好ましく、高い品質が伝わる。

ダッシュボードの中央には、縦に長いタッチモニターが据えられる。インフォテインメント・システムは、数分も触ればメニュー構造を理解できる。反応には若干の遅れがあり、走行中の操作は難しい。

装備は充実 航続距離は短め 価格はお高め

英国市場に導入されるe:Ny1には、2段階のトリムグレードが設定される。お安い方が、4万4995ポンド(約809万円)のエレガンスで、その上に4万7195ポンド(約849万円)のアドバンスが位置する。

今回の試乗車は、アドバンスだった。ホンダは60%の割合でエレガンスが売れるだろうと予想するが、いずれを選んでも装備は充実している。

ホンダe:Ny1 アドバンス (欧州仕様)
ホンダe:Ny1 アドバンス (欧州仕様)

スマートフォンのミラーリング機能に対応した、15.0インチ・タッチモニターのインフォテインメント・システムは英国仕様の標準装備。キーレスエントリーにシートヒーター、パーキングセンサー、オートワイパー、デュアルゾーン・エアコンも備わる。

アルミホイールは18インチが標準。スマホのワイヤレス充電パッドも付いてくる。

アドバンス・グレードを選ぶと、パノラミック・サンルーフにパーキングパイロット支援システム、プレミアムオーディオ、パワーテールゲート、熱線入りステアリングホイールなどが追加される。

ホンダの大きな期待を背負ったe:Ny1ながら、英国価格はお高めといえるだろう。412kmという航続距離も、ライバルに水を開けられていることは事実だ。実用的なファミリー・クロスオーバーとして、それ以外は不満のない内容ではあるのだが。

ホンダe:Ny1 アドバンス (欧州仕様)のスペック

英国価格:4万7195ポンド(約849万円)
全長:4387mm
全幅:1790mm
全高:1584mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:−秒
航続距離:412km
電費:5.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1730kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:68.8kWh
急速充電能力:78kW
最高出力:203ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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