パンダへ通じる魅力 ジープ・アベンジャーでアルプス山脈へ 海抜1700mの充電器を目指す 後編

公開 : 2023.08.12 09:46

ジープ初のBEV、アベンジャー。ブランドの将来を占う重要なモデルの実力を、英編集部が過酷なロードトリップで確かめました。

美意識の高いイタリア人にも共感の容姿

トンネルに入ると、アンビエントライトが灯りジープアベンジャーの車内を彩る。インテリアは適度にポップで、安っぽさとは無縁。スイッチ類の製造品質も悪くない。

ダッシュボードの下には横に長い小物トレイが用意され、センターコンソール内の収納は大きく、利便性にも気が配られている。ただし、シート背もたれのランバーサポートは、筆者の体型には若干合わなかった。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)

イタリアの高速道路を走っていると、アベンジャーは注目度が低くないことがわかる。家族向けのBセグメント・クロスオーバーではあるが、美意識の高いイタリア人にも共感される容姿のようだ。

しばらく運転してメーター用モニターを確認すると、航続距離の減りは当初より早い。それでも、アンドロイド・オートを利用したグーグル・マップのナビによれば、グロースグロックナー高山道路の料金所までは、余裕を持って到達できるようだ。

アルプス山脈が目前へ迫り、残り100kmという地点で徐々に天候が悪化していく。一帯は霧に包まれ、アベンジャーに乗った2人を孤立させる。麓の町、リーエンツを過ぎると、道は徐々に手強くなっていく。勾配がキツくなり、ヘアピンカーブが続く。

予想の航続距離と、実際の残りの距離との数字が徐々に近づいていく。筆者とカメラマンの緊張感が、ジワジワ高まっていく。駆動用バッテリーを使い果たしたら、下り坂を利用しながら戻ってこられる保証はない。

残り50kmを切り表示されたバッテリー・ロー

内燃エンジン車で燃料が少なくなった時と同様に、航続距離が50kmを切った辺りで警告音が鳴った。駆動用バッテリーの残量が減り、モニターには「バッテリー・ロー」と表示されている。

しかし、まだ慌てる必要はない。都市部の郊外など一般的な条件なら、欧州では問題なく充電ステーションまで辿り着けるだろう。

ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)
ジープ・アベンジャー・サミット(欧州仕様)

北上を続け、グロースグロックナー手前の最後の基地となる、ウィンクラーンの町を通過。既に標高は高い。絵画のような谷間を横目に、登り坂は一気に角度を増していく。

目的地まで5km。気温が低下し、電動パワートレインにとって過酷さが強まっていく。ここまで一度も道を間違えなかったことが、きっと吉と出るはず。

アベンジャーのブレーキペダルの感触には、改善の余地がある。意図した通りに効き始めるポイントが掴みにくい。多くのユーザーが気に留めるほどではないものの、AUTOCARをご愛読いただいている方なら、恐らく同意してもらえるだろう。

回生ブレーキの強さは調整できるものの、完全な滑走状態にはならない。先を読みやすい道であれば、最もエネルギー効率を高めることができるのだが。とはいえ、アベンジャーの好感度へ影響するほどではない。

バッテリーEVへ乗り慣れた筆者でも、「バッテリー・レベル・クリティカル」と表示された経験はない。料金所手前の、きつい登り坂でこのモードに入ると厄介だ。距離を逆算しながら運転してきたものの、一抹の不安を抱えつつ、先を急ぐ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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