ジェンセン・インターセプターRスーパーチャージド
公開 : 2014.10.16 23:50 更新 : 2015.06.16 16:46
■どんな感じ?
レザーやパイル織りのカーペット、クローム、アルミが配されるキャビンには高級感がある。天井や大型のブートスペースもキルト柄の装飾が施されている。新しくなったシートはホールド、サポート性ともに優れ、シートポジションもスポーツカーらしく低く寝そべっている。ただしジャガーから手に入れたコラムレバーとシートの調整ボタンだけは室内の雰囲気を明確に損なっていると感じた。
LS3エンジンがどれほどのものかも気になるところだろう。スタートアップした直後はマッスルカーのような振動は伝わってくることはなく、アイドリングは極めて静かに、そして安定している。市街地を走る際は、獰猛なエンジンが載っていることを感じさせる機械音が耳にほんのわずかに届いてくるが、適度な重みをもつステアリングに従順に反応しながら、やはりこの時も事も無げに走り抜ける。グッドウッドの車両と違うのはスロットルの違和感がなくなったこと。スムーズな速度変化に徹する。
クルマの少ない道路ではLSAの ’心拍数’ は徐々に高まってゆく。試しにガスペダルを踏み込んでみる。柔らかいサスペンションは一度グッと沈み込み、そこからは腹を空かせた獣のように突進する(この表現がぴったりだ)。6000rpm前後で変速するまでの間、エンジンは雄叫びをあげながら、70年代初期のGTがそうであったように極めて高速に空気を切り裂いていく。
炸裂するエンジンは勢いを緩めることなく高らかに回りながら、ステアリングは動きを安定させることに徹する。ある程度のロールに関しては覚悟が必要だが、コントロールできない程ではない。110km/h前後まで速度を落としてみれば、1800rpm程度で巡航が可能。この速度域ではあくまでジェントルであろうとしているようだった。
ギアボックスはオートマティックしか用意されていないが侮る事なかれ。キックダウンは忠実であるし、変速もスムーズかつスマート。かつてのギアボックスとは異なり、ミドルコーナーでギアの選択に躊躇うような仕草はまったくない。
制動力は充分かつ漸進的。ただしペダルフィールは制限されており、ヘビーなブレーキング時では盛大にノーズがダイブする。これに関しては残念ながら ’接地感ある’ とは言えない。ABSを追加すればこの辺りの印象もずいぶんと変わってくるはずだけれど、そうなればコストの問題が絡んでくるのだろう。
実用性は大きく高まっている(と言うよりかは一般車並みになった)。ドアミラーは普通に使えるし、ワイパーもきちんと前方の視界を保ってくれる。電動シートの調整は簡単だし、エアコンもちゃんとエアコンとしての仕事をする。ウインドノイズはこれまでのインターセプターに比べると低減されていると感じたが、ボディ形状ゆえの空気抵抗は受け入れるほかない。トラクション・コントロールはのちのモデルには遅からず追加される予定であるが、現時点で履いている255サイズのピレリ製リア・タイヤは静止加速でも充分な粘り強さを発揮している。