1度は乗りたい2+2 ポルシェ911 ルノー・アルピーヌ フェラーリ・モンディアル ロータス・エクセル 4台比較 前編
公開 : 2023.08.20 07:05
スーパーカーと並んでも見劣りしない存在感
グレートブリテン島では、ロータスを創業したコーリン・チャップマン氏が思い描いたロードカーの究極形、エクセルが1982年に誕生。エスプリの実用版として、1974年の2代目エリートを発展させた、フロントエンジンで2+2のグランドツアラーだった。
F1で得た名声を公道用モデルへ展開し、収益性の高いビジネスモデルを構築するという、ロータスの期待を背負っていた。英国価格は1万7980ポンドとお手頃で、ダイナミックな走りが自動車評論家の称賛を集めた。
プロポーションは低くワイドで、スタイリングはウェッジシェイプ。価格帯が遥か上のスーパーカーと並んでも、見劣りしない存在感があった。
これら4台で、最も大きな衝撃をもたらしたのは1984年の911 カレラ3.2かもしれない。使い込まれたボディシェルに従来的なトーションバー・サスペンションが組まれていたが、8割の部品が新しいと主張された3.2L水平対向6気筒エンジンが載っていた。
内部構造だけでなく、マニフォールドなども新設計。最高出力233ps、最大トルク28.8kg-mを発揮し、滑らかで粘り強い走りを実現していた。ブレーキも大径化され、フラッグシップの911 ターボに迫る能力すら秘めていたといえる。
911 カレラ3.2のエンジン制御を司ったのは、ボッシュ・モトロニック2と呼ばれる電子システム。鋭いレスポンスと、優れた燃費が両立できていた。圧縮比は10.3:1で、1980年式911 Sの8.6:1から大幅に高められていた。
1980年代のドライバーズカーとして最高の1台
オプションに用意されたのが、スポーツ・エクイップメント(SE)・パッケージ。鍛造のフックス・アルミホイールに、ハイグリップなピレリP7タイヤが組まれた。前後のサイズは205/55と225/50で、現代水準では細身だが、印象的なスタンスを生んでいた。
今回ご登場願ったガーズ・レッドの911 カレラ3.2 SEは、1989年式。5速マニュアルのトランスミッションは後期型のG50ユニットで、現オーナーのチャールズ・ポーター氏は「往年の金融トレーダーの夢のクルマ」だと表現する。
インテリアはアイボリー・レザーで、シートにはレッドのパイピングがあしらわれている。「これまで、911を欲しいと考えたことはありませんでした。このクルマを偶然見かけ、1度の試乗で心が奪われたんです」。と打ち明ける。
1980年代のドライバーズカーとして最高の1台を運転することは、現在でも非常に特別な体験になる。素晴らしい報酬を今でも与えてくれる。
スポーツシートは身体にフィットし、ダッシュボードの望ましい位置にメーターが並ぶ。ボンネットは低く傾斜し、両脇にヘッドライトへ続く峰が伸びる。素晴らしくドラマチックで、人間工学的には不充分な車載機能の操作系を忘れられる。
ステアリングホイールやペダルには、適度な重さが伴う。ダンパーは滑らかに動き、しっかり衝撃を吸収。フラット6エンジンは、低回転域で迫力のある低音を鳴らす。発進直後から、ソリッドなボディシェルとの統一感がわかる。
この続きは中編にて。
画像 1度は乗りたい2+2 ポルシェ911 ルノー・アルピーヌ フェラーリ・モンディアル ロータス・エクセル 現代版モデルも 全146枚