天にも昇る運転体験 ポルシェ718スパイダー RSへ試乗 ヴァイザッハ仕様なら車重は1.4t切り

公開 : 2023.08.10 08:25  更新 : 2023.08.10 13:43

フラット6を積んだボクスターとの別れを惜しむ、特別なRSが登場。秀抜のシャシーが生む体験を、英国編集部が評価しました。

911 GT3譲りのNA 4.0L水平対向6気筒

今から20年前、ポルシェはミドシップ・スーパーカーのカレラGTを発売した。レーシングカー譲りの崇高なV型10気筒エンジンは、一生に一度といえる音響体験を味わわせてくれた。それを操るドライバーには、少々ボリュームが大きすぎたとはいえ。

同社のミドシップ・プラットフォームを土台にした最後の内燃エンジンモデル、718スパイダー RSも素晴らしいサウンドを奏でる。得られる体験は、それ以上かもしれない。

ポルシェ718スパイダー RS(欧州仕様)
ポルシェ718スパイダー RS(欧州仕様)

サーキットをキリキリに攻め込むことが追求されていない、現時点で唯一の、RSを掲げるポルシェでもある。純粋主義的なオープン・モデルでありながら、ヘルメットを携行する必要はない。

718スパイダー RSの英国価格は12万5499ポンド(約2271万円)だが、この価格帯では最も走りがダイナミック。ドライバーの直後にエアスクープが設けられ、表現し難いハードな吸気ノイズを鑑賞できる。同時に、普段使いにも問題なく対応する。

718ケイマン GT4 RSのオープントップ仕様といえるが、クーペとは異なり、公道を前提としたチューニングが施されている。それでも、エンジンは911 GT3譲りの自然吸気4.0L水平対向6気筒で、同じもの。500psという最高出力も変わらない。

トランスミッションは、ショートレシオのデュアルクラッチ・オートマティック、7速PDKが組まれる。一般道で能力を引き出せる、純粋なドライバーズカーを目指したとされているが、マニュアルは選べない。

しなやかな乗り心地 見事な操縦性のバランス

ポルシェのGT部門を率いるアンドレアス・プロイニンガー氏は、いくつかその理由を教えてくれた。718スパイダーに搭載される6速MTは、9000rpmまで回る4.0Lエンジンにはギア比がロング過ぎる、というのが1つ。

また911 GT3の6速MTは、物理的に大き過ぎるそうだ。リアエンジンの場合、トランスミッションは車両中央の前方側へ伸ばせる。反面、後方へ伸びるミッドシップの場合は、充分な余地がない。

ポルシェ718スパイダー RS(欧州仕様)
ポルシェ718スパイダー RS(欧州仕様)

MTの欠如は、718スパイダー RSに多少の影響を与えている。完璧な仕上がりに対し、欠けている最後の1ピースがあるとするなら、シフトレバーとクラッチペダルだろう。それでも、7速PDKは例によって電光石火の変速を決めてくれる。

また、それを補う魅力も備わっている。しなやかな乗り心地と、見事な操縦性のバランスだ。オープンエアを謳歌できる以上の訴求力を生んでいる。

ボディキットは、718ケイマン GT4 RSと大きく違う部分の1つ。高くそびえるリアウイングは与えられず、ダックテール・スポイラーがテールを飾る。控えめな分、ダウンフォースもそこまで強くはない。

フロントスプリッターやアンダーボディの構造も、それに合わせて適切に形状が改められた。高い速度域では、特に影響が大きいはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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