アイデアは間違いなく魅力的 ロータス・エミーラ I4へ試乗 AMG 4気筒ターボとの調和 後編

公開 : 2023.08.13 08:26

伝統銘柄のスポーツカーが、ドイツ生まれの強心臓を獲得。同社最後になるであろうエンジンモデルを、英国編集部が評価しました。

躍動的な反応はロータスならでは

メルセデスAMG由来の、2.0L直列4気筒ターボを得たエミーラ。それでは、ロータスとして3.5L V6エンジン版より理想的な仕上がりといえるのだろうか。シャシーとの調和に少しの疑問を感じた、というのが筆者の本音だ。

車重は1446kgで、直列4気筒のロータスとしては軽くないものの、サスペンションは従来どおりソフト。減衰力は良く練られ、スプリングレートは控えめで、一般道ではしなやかな乗り心地にある。オプションの、ツーリング・サスペンションでも。

ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)
ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)

舗装が剥がれた穴などの衝撃はしっかり丸められ、速度抑止用のスピードバンプも滑らかにこなす。驚くほどドライバーに優しい。

コーナリングも落ち着いている。写真ではボディロールが大きく見えるが、運転時の印象とは一致しない。実際は、2+2シートのエヴォーラよりシャープだ。

2023年の普段使いできるスポーツカーという基準でいえば、ボディサイズも充分コンパクト。実際に郊外の道を走らせても、大きくは感じられない。

ステアリングには、もう少し手応えがあってもいい。パワーアシストを弱め、フロントタイヤのサイズを落とすという方向性はあるだろう。それでも、躍動的な反応はロータスならではだ。

もちろん、ミドシップされるエンジンもすこぶるイイ。直列4気筒ターボとしては驚異的にパワーデリバリーがリニアで、ホンダのVTECエンジンのように、7200rpmのレッドライン間際まで気持ち良く吹け上がる。

調和しきれないシャシーとパワートレイン

ブレーキ制御による電子デファレンシャルも機能的。リアタイヤは幅が295とワイドだが、トラクションの縛りから逃れられないわけではない。

コーナーへ突っ込めば、フロントタイヤがしっかり路面へ食らいつき、リア寄りの前後重量配分が生むテールスライドへ持ち込める。挙動は漸進的で、感触はリアルで、自信を持ったままリアタイヤを振り回せる。

ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)
ロータス・エミーラ l4 ファーストエディション(英国仕様)

直線スピードにも不満はない。アルピーヌA110 SやポルシェケイマンSと、いい勝負を見せそうだ。

と、褒め称える内容が続いたが、ロータスの高精度でダイレクトなシャシーに対し、パワートレインが若干調和しきれていないという、もどかしい事実がある。エンジンは驚異的に高性能でも、優れたシャシーと完全には一体化されていないように感じた。

ツインスクロールターボを採用し、吸排気系は独自開発されている。だがM139型ユニットは、理想的なまでのスロットルレスポンスを獲得できていない。

8速デュアルクラッチATも、マニュアルモードが備わり悪くない。だが、シフトパドルを弾いてから実際に反応するまでの僅かなタイムラグが、シャープな印象を霞ませる。変速自体は鋭いのだが。

エミーラ l4は、圧倒的な速度で郊外の道を快走してみせるものの、シャシーとパワートレインが宿す個性の波長が一致しにくい。穏やかな長距離ドライブも快適ながら、パワフルなエンジンは少々淡白過ぎる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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