テスラ・モデルS 詳細データテスト 市販車最高の加速 全体の洗練度は不足気味 右ハンドルがほしい

公開 : 2023.08.12 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

モデルSの登場はもう11年も前だ、とバカにするのは簡単だ。たしかに、納得のいく航続距離を備えた電動サルーンでテスラが世界中をあっと言わせたのは2012年のことで、英国導入は翌2013年だった。しかし、そこからの変更ぶりを考えると、デビューしたときのまま旧態化したと考えるのは誤解だと言える。

テスラは技術面の詳細について、あまり語りたがらない。しかし、すでにこのプレイドを分解し、その細部までを検証している第三者がいる。それでわかったのは、スタイリングこそほぼ変わらないものの、中身はまったくの別物になっているということだった。

途轍もない加速性能を誇るモデルSプレイドだが、外観ではっきりそれと知れるのは赤いキャリパーくらいのものだ。
途轍もない加速性能を誇るモデルSプレイドだが、外観ではっきりそれと知れるのは赤いキャリパーくらいのものだ。    JOHN BRADSHAW

リチウムイオン電池のテクノロジーは、この10年でだいぶ進歩した。モデルSはパナソニックと共同で生産するニッケル・コバルト・マンガン筒型セルを相変わらず使用しているが、その構造や冷却と積載の方法もかなり進歩している。キャパシティはグロスで100kWh、ネットでも97kWhに達した。

シングルモーター版はラインナップ落ちして久しく、現在のモデルSはデュアルモーターのロングレンジと、今回テストする3モーターのプレイドをラインナップ。3モーターはアウディSQ8 E−トロンのように、フロントに1基、リアに左右1基ずつというレイアウトで、フロントは418ps、リアは各420ps。合計すれば1258psだが、総合出力は1034psにとどまる。バッテリー出力の限界があるからだ。また、フルスロットルでも合計値に届かないのは、トルクベクタリングが機能しているのも一因だ。

テスラがクルマづくりの経験値を積み重ねるにつれて、そのプロセスと、モデルSのデザインは磨かれてきた。大部分がアルミ製であることは変わらないが、多くのスタンプ成型による構造部材は鋳造品に置き換えられ、ディテールには無数の改修が入っている。車両重量は、2013年に計測したP85Dに対し、今回のテスト車が45kg重くなっている。

フロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクというサスペンション形式に変更はない。しかしながら、実際にはリアが4リンクから5リンクに変わっている。また、全車エアスプリング仕様となった。プレイドのリアのモーターとサスペンションを保持するクレードルは専用設計で、2モーターに対応している。

外観では、新型のホイールと改修されたバンパー、ブラックアウトしたトリムを装着。もっとも明確な変更は、ホイールアーチがワイド化されたことで、より踏ん張りの効いたスタンスを生んでいる。

注目したいのは、プレイドがそれと主張する部分の少なさ。リアのバッジ以外は、ささやかなリップスポイラーと赤いブレーキキャリパーくらいだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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