売れ筋Q5がバッテリーEVへ アウディQ6 eトロン 試作車へ試乗 ポルシェと共同開発

公開 : 2023.08.19 08:25

Q5と同様の魅力があり親しみやすい

担当の技術者へ、Q6 eトロンの直接的なライバルを尋ねたところ、簡単には挙げられないと話していた。BMW iX3がサイズ的には近いものの、こちらは内燃エンジンにも対応したアーキテクチャを採用し、中国市場が強く意識されている。

BMW iXはクラスが異なる。キアEV6やヒョンデアイオニック5はサイズが小さく、ブランドイメージという点でも、クロスすることはないだろう。

アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ
アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ

アウディが目指したのは、過去10年間のベストセラー、Q5の内容を可能な限り維持しつつ、電動化すること。Q6 eトロンはまったく新しいモデルだが、実際、高級感や実用性では現行の内燃エンジン版に近い。同等の魅力があり、親しみやすいと思う。

車内から観察していくと、荷室は充分に広い。前後の乗員空間もライバル以上。高密度化された駆動用バッテリーはフロア高を抑えており、内燃エンジンのSUVとキャビンの高さは近づけられている。

インテリアデザインには開放的な雰囲気があり、質感はソリッド。プロトタイプということで、インフォテインメント・システム用モニターには分厚い布がかけられていたが、日常的に視界へ入るパネル類などは、上質な素材で綺麗に仕立てられていた。

望ましい位置に並べられたスイッチ類のタッチにも、高級感がある。触れることが許されたのは、一部だったが。

Q6 eトロンのアドバンテージは小さくない

乗り心地は、凹凸の目立つアスファルトをしなやかに均し快適。舗装の剥がれた穴や、速度抑止用のスピードバンプなども、エアスプリングが見事に処理していた。

走行中の車内は、非常に静か。アウディは、開発では車内の音環境にも注力したと説明しており、ロードノイズなどは見事に抑え込まれている。駆動用モーターのハミングも、小さく耳に届くだけだった。

アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ
アウディQ6 eトロン55 プロトタイプ

ドライブモードに関わらず加速はたくましく、パワーデリバリーを予想しやすく感じた。アクセルペダルの操作へ、細かく反応してくれる。

ダイナミック・モードを選択すると余裕が増し、回生ブレーキの効きが強くなる。一層滑らかなドライビング体験を得られ、Q6 eトロンのベストモードかもしれない。

一方で、航続距離を最大限に伸ばすモードを選んでも、充分に活発。加速が鈍いとまでは感じないだろう。

eトロンGTより新しいモデルとして、体感できる技術的な進歩度合いは期待より小さいかもしれない。しかし、エネルギー効率を大幅に高めたアーキテクチャを採用しており、Q6 eトロンのアドバンテージは決して小さくない。

カモフラージュが解かれたスタイリングや、インフォテインメント・システムなどのインターフェイス、実際の航続距離や動力性能、販売価格など、具体的な評価のために確認すべき点はまだ多くある。2024年の始めまで、期待して待つことにしよう。

アウディQ6 eトロン55 プロトタイプのスペック

英国価格:6万7000 (約1212万円/予想)
全長:−mm
全幅:−mm
全高:−mm
最高速度:−km/h
0-100km/h加速:6.0秒(予想)
航続距離:600km(予想)
電費:−km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:−kg
パワートレイン:非同期モーター(フロント)+永久磁石同期モーター(リア)
駆動用バッテリー:100kWh
急速充電能力:270kW
最高出力:401ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:シングルスピード(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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