商用EVの新たな可能性 イヴェコ プロ向けのバッテリー交換システム発表 柔軟性ある運用
公開 : 2023.08.14 18:25
商用車メーカーのイヴェコが、バッテリー交換システムを搭載する商用EVを発表。必要に応じてバッテリーサイズを変更することで、柔軟な運用が可能になるとしています。
商用EVにバッテリー交換技術 目的は
中国のEVメーカーであるニオ(NIO)は、駆動用バッテリーの交換システムを開発し、母国を中心に交換ステーションを展開している。これは、迅速にバッテリーを交換し、EVの充電時間を短縮するというアイデアが中心となっている。
しかし、商用車メーカーのイヴェコは、ニオとは異なるアプローチのバッテリー交換システムを商用バンに導入した。新型eデイリー(e-Daily)には、37kWh、74kWh、111kWhの3種類のバッテリーサイズが用意されており、WLTP航続距離は120kmから350kmである。画期的な点は、ユーザーが必要に応じて、搭載するバッテリーサイズを変更できるというところ。
イヴェコによると、商業利用において最も大きなメリットが得られるという。バンをラスト・ワン・マイルの配送車として使用し、長い航続距離を必要としない場合は、小さなバッテリーで十分である。導入コストと環境への影響を抑えるだけでなく、(eデイリーの場合)37kWhあたり270kgのバッテリー重量を取り除くことで最大積載量を増やせる。
車両の使用状況が変わり、航続距離を伸ばした方が便利な場合は、イヴェコの整備ステーションに持ち込み、バッテリーを74または111kWhに増やすことができる。同様に、必要に応じてバッテリーを取り外したり、車両間で交換したりすることもできる。
バッテリーパックの交換はイヴェコの整備ステーションで行う必要があり、交換作業には約2時間かかるとみられる。つまり、迅速な交換ないし充電を目的としたものではなく、車両の航続距離とリソースの柔軟性を可能にするシステムである。
バッテリーパックを交換する際、約1万5000ポンド(約275万円)と人件費がかかる。古いバッテリーはイヴェコに有料で引き取ってもらえるが、その金額はバッテリーの使用年数と状態によって異なる。
ラダーフレームにしっかりはまるバッテリーパック
イヴェコは今回、中国のバッテリーメーカーであるマイクロバストのバッテリーを採用した。すでに多くのEVで使用されているものと同様のニッケル・マンガン・コバルト(NMC)系リチウムイオンを使用するが、イヴェコのシャシーに脱着できるようモジュラーパックに組み込まれている。15万5000マイル(24万9500km)、8年間の保証、そして使用頻度(80kWのDC急速充電に対応)にかかわらず80%の性能保証も、バッテリーセルの長期性能に対する自信を示唆している。
イヴェコのビジネスライン・ディレクターであるマイク・カッツ氏は、「このシステムは当社独自のものです。自社で開発しました。当社のラダーフレーム・シャシーは、(バッテリー)EVだけでなく、将来的には水素自動車にも適応できるよう、モジュール化するために完璧に設計されています」と述べている。
イヴェコは水素関連のプロジェクトでヒョンデと提携しており、イヴェコのバンやバスのコンセプトモデルではヒョンデの燃料電池技術がすでに披露されている。ただし、イヴェコのモジュラーバッテリー技術がヒョンデの乗用車に採用される可能性は示されていない。
カッツ氏は、この技術を他社にライセンス供与する計画はまだないと強調した。「これは当社独自の機能なので、社内に留めておきたいと考えています」
イヴェコの代替パワートレイン担当責任者であるスティーブン・パウエル氏は、バッテリーはラダーフレーム・シャシーの中に収まるように設計されていると述べた。「しかし理論的には、他のプラットフォームでも動作するように設計できない理由はありません。モジュール式バッテリーを中心に設計されている限り、乗用車であろうとその他の車両であろうと、車両に依存するでしょう」