大型バスからトライアンフまで ハリントン・マニア 英国コーチビルダーが産んだ7台 後編

公開 : 2023.08.27 17:45

今はなきコーチビルダー、ハリントン。大型バスからスポーツカーまで幅広く手掛けた歴史を、英国編集部がご紹介します。

サンビーム・ハリントン・アルパイン・シリーズC(1963年式)

オーナー:ジャスティン・ハリントン氏

「名字が同じなのは、偶然ではありません。トーマス・ハリントン&サンズ社の創業者、トーマス・ハリントンはわたしの曽祖父なんです」。とジャスティン・ハリントン氏が誇らしげに話す。

サンビーム・ハリントン・アルパイン・シリーズC(1963年式/英国仕様)
サンビーム・ハリントン・アルパイン・シリーズC(1963年式/英国仕様)

彼が所有するレッドのハリントン・アルパインは、1963年式のシリーズC。その年にサンビームがアルパインをフェイスリフトしたため、製造期間は非常に短い。フロントガラスの形状が変更したことで、独自のルーフはフィットしなくなってしまった。

その後のシリーズDは更に希少で、生産数はたった6台。そのまま、廃業を迎えている。

「親族という縁がなければ、これを所有することはなかったかもしれません。70年近く続いた会社でしたが、廃業から60年が経過しています。いわば、一家の歴史を物語る象徴。時が来たら、息子へ受け継ぐつもりでいます」

このクルマは、ジャスティンが所有する2台目のハリントンらしい。もう1台は、ワークスチーム用として1962年に3台だけ作られた、ル・マンのレーシングカー。その年にル・マン24時間レースを戦っている。

「アルパイン・シリーズCへ乗るのは、イベントの時だけ。年末には、ヨークシャー州で開かれる定期イベントにも参加しようと思っています」

「数1000kmは毎年走ります。クラシックカーは使った方が状態を保てます。クルマを劣化させる手っ取り早い方法は、乗らないことでしょうね」

サンビーム・ハリントン・アルパイン・シリーズC(1963年式)

オーナー:アンディ・ゴールドスミス氏

ハリントンが手を加えたサンビーム・アルパインは、多くのサンビーム・ファンからコレクターズ・モデルとして珍重がられている。実際、アンディ・ゴールドスミス氏のように、古くからのマニアが大切にしている場合も多い。

サンビーム・ハリントン・アルパイン・シリーズC(1963年式/英国仕様)
サンビーム・ハリントン・アルパイン・シリーズC(1963年式/英国仕様)

レッドのハリントン・アルパイン・シリーズCへは、1980年代初期に開かれたオーナーズ・ミーティングで出会ったという。その後20年ほど行方不明だったが、2021年にオークションへ出品され、念願叶って落札に至った。

「アルパインのスタイリングが好きです。後期のハリントン・ボディは特にね。ル・マンも人気ですが、歴代で唯一、ハッチバックでリアにフィンがあるシリーズCが自分では1番です」。と話す彼は、標準のアルパインも2台所有している。

当時のハリントンは、ノーマルのエンジンのほか、3段階のチューニング仕様もオプションとして設定していた。「これには、ステージ2のエンジンが載っています。実際、ノーマルよりパワフルなようです」。とアンディが説明する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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