大型バスからトライアンフまで ハリントン・マニア 英国コーチビルダーが産んだ7台 後編

公開 : 2023.08.27 17:45

同じハリントン・アルパインは2台とない

「雨がちの日には、非常に頼りになります。妻もハリントンの方が気に入っているようです」。サンビーム・ハリントン・ル・マンと異なり、ルーフ後方へ通気孔が備わるため、走行時は空気を流し換気できる。雨でも、窓は曇りにくい。

コーチビルダーによる少量生産ということで、ハリントンは顧客の要望へ可能な限り応えた。オプションも幅広く用意され、まったく同じハリントン・アルパインは2台とないと考えられている。

2023年5月のハリントン・ギャザリング・ミーティングの様子
2023年5月のハリントン・ギャザリング・ミーティングの様子

「これはバケットシートが装備され、ドアの内張りにはパッド付きの膝当てが追加されています。快適で優れたオプションだと思います」。オープンボディのサンビーム・アルパインより、静かだとも話す。

「オリジナルのステアリングホイールは、過去に紛失してしまったようです。恐らく、カルロッティ社製だったはず。クラクションのセンターボタンがない、唯一の設定でしたから」

サンビーム・ハリントン・ル・マン(1962年式)

オーナー:グレン・ブラッケンリッジ氏

多くのハリントン・アルパインは、レストアを受け大切に運転されているが、ハリントン・マニアのグレン・ブラッケンリッジ氏は違う。長年のレース・キャリアを保つべく、レッドに塗られた1台でサーキットを巡っている。

サンビーム・ハリントン・ル・マン(1962年式/英国仕様)
サンビーム・ハリントン・ル・マン(1962年式/英国仕様)

「以前のオーナーは1980年代にこのクルマでラリーを始め、1990年代には本格的なチームを組んでいました。ラリー・モンテカルロ・ヒストリックに5回も出場したといいます」。とグレンが説明する。

「その後は共同保有になり、ラリーイベントを数回戦っています。最高で2位に輝いています。多くのサンビームより、モータースポーツでの戦歴は多いと思いますよ」

グレンがこのクルマを発見した時は、ボロボロの状態だったらしい。立ち上げ当初からのサンビーム・アルパイン・オーナーズ・クラブのメンバーとして、復活作業へ挑むのは自分しかいないと考えたという。

周囲のクラブメンバーは、改造されたハリントン・ル・マンへ興味を示さなかった。しかしレーシングドライバーとして経験を積んできた彼は、ハリントンでイベントへ参加する計画を立てていた。むしろ好都合だったようだ。

エンジンは2000年代までイランで現役だった

「実際のところ軽くはなく、サーキットよりラリー向き。上位に食い込むことはありませんが、ラップタイムを削るのが面白い。整備を自分でこなせるので、リタイア率が高いイベントで完走できた時は、特に充足感が高いですね」

過去には、部品の入手が困難だった時代もあったとグレンは振り返る。だが近年はハリントンの価値が見直され、一部の部品が再生産されだし、状況は改善しつつあるという。

サンビーム・ハリントン・ル・マン(1962年式/英国仕様)
サンビーム・ハリントン・ル・マン(1962年式/英国仕様)

「サンビーム・タイガーのオーナーズクラブが、助けてくれました。タイガーの部品が復刻され始め、ハリントンも恩恵を受けています。2000年代まで、エンジンはイランで現役だったことも大きいですね。そこから輸入したこともあります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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