ヒョンデがあえて「リスク」を取る理由 斬新デザインの7人乗りSUV チェス戦略とは

公開 : 2023.08.16 18:45

ビッグデータを使ったトレンド予測

4、5年後のクルマの姿を予測しながらデザインを描き始めることについて、イ氏はこう話している。

「正直なところ、将来何が起こるかわからない。だからこそ、ビッグデータを使ってトレンドを見極めるのです。主流トレンドの将来を可能な限り正確に予測しなければならないので、社内にビッグデータ・グループがあり、社外にも別のグループを利用しています」

ヒョンデ・サンタフェ
ヒョンデ・サンタフェ    ヒョンデ

「特にパンデミックの最中には、両者ともアウトドア・ライフスタイルを志向していました。クルマは自分だけの安全な空間になります。RV(レクリエーション・ビークル)車はとても人気がありますね」

「わたし達はリスクを冒したかった。ノーリスク、ノーリターン。これが、当社がチャレンジャーである理由でもあります。そうでなければ、常に主流の方向に従うことになってしまう。そのままではファスト・フォロワー(fast follower)になってしまいますが、わたし達はファスト・フォロワーにはなりたくなかったのです」

サンタフェは確かにそのようなクルマではない。また、ラインナップ中のどのモデルとも重複するようなデザインでもない。

「当社はすでにチェス・デザイン戦略を発表しています。多くのメーカーがファミリールック戦略を採用しており、クッキーカッターのような、ロシア人形のような一貫性があります。しかし、わたし達にとってヒョンデは顧客中心のブランドであり、ライフスタイルはお客様によって大きく異なります。Z世代が1世帯に1人いるのと、父親と母親と3人の子供がいるのとでは、まったく違いますよね。『チェス』とは基本的にキング、クイーン、ビショップ、ナイトからなるものであり、すべてがまったく異なり、機能的にも異なりますが、チームとして協力し合うのです」

「ヒョンデの超小型SUV、キャスパーは、非常にコンパクトで、ビビッドなキャラクターを持つZ世代指向のSUVです。このクルマ(サンタフェ)はファミリーカーなので、同じデザイン言語を使うことはできません」

「ですから、わたし達は多様性を持っています。賛否両論ありますが、デザイン・ビジョンを高めるためにも、顧客中心であることこそがブランドのあるべき姿だと考えています。正しいとか間違っているとかではなく、これはお客様が決めてくださることだと思います」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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