ラリーとレースの二刀流 フレイザー・ナッシュ・ミッレミリア モダンな運転体験 後編
公開 : 2023.09.02 17:46
かなりモダンなドライビング体験
コクピットは自然に身体へ馴染む。ダッシュボードは薄く、膝が触れることはない。身長が高めの筆者でも、楽に足を伸ばせる。モータースポーツを前提としているだけに、ペダルの位置は近いものの、決して狭いとは感じない。
正面には細いリムのステアリングホイールが伸びている。その奥には、速度計と回転計が綺麗に並ぶ。左右対称の眺めが心地良い。エンジンを始動する前から、満ち足りた気持ちになる。
筆者がブリストルの2.0L直列6気筒エンジンに接した機会は限られるが、かくして、想像以上に素晴らしいものだった。3基並んだソレックスキャブレターは、冷間時でも盛大に空気を吸い込み、4000rpm以上では惚れ惚れするようなサウンドが充満する。
背中がシートに押し付けられるような勢いはないものの、トルクが太く、滑らかにパワーが放たれる。操縦系には明確で正確な感触が伴い、ドライビング体験はかなりモダン。1930年代にルーツを持つモデルだと感じさせない。
サーキットを走らせれば、若々しい印象は更に強まる。同年代のジャガーより、1950年代後半のロータスに近いようにすら思える。
車重は約840kgと軽く、シャシーのバランスも素晴らしい。ステアリングホイールはダイレクトで繊細。ブレーキも、不自然な偏りがなく頼もしい。公道の速度域では、限界領域まで迫ることが難しい。
ステアリングを握れば価値へ深く納得
操縦性は、まさにお手本通り。オリジナルの状態が保たれ、ミッレミリアの乗り心地は比較的ソフト。サーキットやラリーステージへ向かう早朝の郊外の道では、本番と同じくらい、爽快な時間を謳歌できるに違いない。
もし何か不満を探すなら、トランスミッションが挙げられるかもしれない。それでも、同年代のライバルモデルより優れてはいる。
筆者の場合、どうしても複数のクルマを手元に置いておきたくなる。お手頃な中古車を選びがち。しかし、フレイザー・ナッシュ・ミッレミリアは、新たな発見を与えてくれた。これまでのクルマ選びが、間違っていたのかもしれないと疑うほど。
より多くの金額が1台に必要だとしても、1度ステアリングホイールを握れば、その価値へ深く納得できる。アルディントン兄弟とも、今ならきっと話が合うに違いない。
協力:ペンディン社