英国の中古タイヤ事情 規制無視の粗悪品が8割以上? 問題点やメリット・デメリットは

公開 : 2023.08.17 06:25

知れば知るほど闇が深い、英国の中古タイヤ事情について紹介します。主にドイツから輸入される理由、法規制、メリット、デメリットなどをまとめました。英国で中古タイヤを買うのはリスクが高すぎるかも?

「パートウォーン」と呼ばれる英国の中古タイヤ

タイヤが時間の経過とともに劣化していくことは誰もが知っている。しかし、現在英国では物価が上昇しているため、新品タイヤの購入費用を惜しむドライバーも多い。

その解決策の1つが、中古タイヤを購入することだ。文字通り、誰かがすでに使用したものを取り外し、中古品として販売されるタイヤである。今回は、英国の中古タイヤ事情について紹介したい。

「パートウォーン(part-worn)」とは英語で「部分的に摩耗した」という意味。
「パートウォーン(part-worn)」とは英語で「部分的に摩耗した」という意味。

英国では、使用済みの中古タイヤを「パートウォーン・タイヤ(part-worn tyres)」と呼ぶ。英国で1年間に購入されるタイヤの総本数のうち、約10%にあたる550万本がこのパートウォーンに分類されると推定されている。

中古タイヤの多くは、ドイツから輸入される。これは、ドイツの法律で残り溝の深さが3mm以上と定められているのに対し、英国では1.6mm以上と、まだ公道走行が可能なためである。

どのような規制がある? メリットは?

英国では、中古タイヤの売買は違法なものではない。前述の通り、業界団体のTireSafeによると、毎年550万本ものタイヤが「パートウォーン」として販売されている。

しかし、販売業者は法律により、以下のような厳しい規制を遵守しなければならない。

タイヤは安全に大きく関わる部品であるため、厳しい規制が設けられている。
タイヤは安全に大きく関わる部品であるため、厳しい規制が設けられている。

まず、中古タイヤは良好な状態であることが求められる。サイドウォールに膨らみがないこと、トレッドに大きな切れ目がないこと、カーカスやコードといった構造体が露出していないことなどが必要だ。

また、販売時に少なくとも2mmのトレッドがあり、サイドウォールには高さ4mm以上の文字で「Part-worn」と明示する必要がある。

こうした規制は非常に単純なものだが、多くの販売業者がこれを無視していると言われる。日本の読者にはいないかもしれないが、もし英国で中古タイヤの購入を検討しているのであれば、業者が法律を遵守しているかどうかを確認してほしい。

中古タイヤの大きなメリットは、新品のタイヤよりも値段が安いことである。聞いたこともないメーカーの格安タイヤではなく、有名ブランドの高品質なタイヤを購入できるかもしれない。

危険すぎる粗悪品 85%が不適合?

中古タイヤの多くは、安全でない可能性がある。誰かがタイヤを外したということは、「もう安全ではない」「交換したほうがよい」と判断されたと考えるべきである。タイヤ交換の判断基準は人によってまちまちだが、少なくとも前のオーナーにとっては役目を終えたということだ。

当然ながら、新品のタイヤよりも残り溝が浅いため、特にウェット路面ではグリップ力が低下する。つまり、新品に比べてクルマのトラクションが低下し、コーナリングやブレーキングの性能も低下してしまう。

政府や業界団体の調査によると、英国で売られている中古タイヤの大半が規制に適合していないようだ。
政府や業界団体の調査によると、英国で売られている中古タイヤの大半が規制に適合していないようだ。

業界団体TireSafeが実施した調査では、英国で販売されている中古タイヤの最大98%が規制に適合しておらず、34%が「危険」とみなされる可能性があると判明した。仮に規制を満たしているタイヤであっても、厄介なリスクが隠れているかもしれない。

また、これも言わずもがなではあるが、中古タイヤは新品タイヤほど長持ちしない。交換の頻度も高くなるため、長期的に見ると節約効果はそれほど大きくはないだろう。新品のタイヤは溝が8mmもあるのに対し、中古タイヤはその4分の1程度しかない。そのため、数百kmしか走れず、すぐに交換が必要になる。

さらに、英国政府による調査では、85%の中古タイヤが規制不適合であることが判明した。また、11%の中古タイヤが製造から10年以上経過しているという。

中古タイヤに関する調査で見つかった問題点をさらにいくつか挙げてみよう。

・一部のタイヤは、トレッドに金属コードが露出するほどの深い切れ込みがあった。
・サイドウォールの外側がホイールリムの内側に取り付けられるなど、タイヤが正しく装着されていない。
・サイドウォールの一方に異常な膨らみがある。
・英国規格に適合しない修理が施されている。
・タイヤに硬い固形物が突き刺さっている。

昔は、「リモールドタイヤ」や「リトレッドタイヤ」といった再生タイヤがよく使われていた。リモールドタイヤは、厳しい規制を遵守している限り合法であり、正しく製造されれば、新品タイヤよりも安全性が著しく劣るということはない。リトレッドタイヤは、中古タイヤのトレッドとサイドウォールを剥がし、カーカスに新しいゴムを貼り付けたもの。

しかし、近年ではアジアメーカーの格安タイヤが普及するにつれ、英国における再生タイヤの人気は下がっている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・ウォリック

    Jack Warrick

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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