残したいV8+FRのスポーツ レクサスLC フォード・マスタング ジャガーFタイプ 3台乗り比べ 後編
公開 : 2023.08.26 20:25
Fタイプより運転で得られる充足感は濃い
LC 500も、乗り心地が硬いと感じる場面はある。コンセプトカーのスタイリングを量産車へ展開するに当たり、レクサスのデザイナーはスペアタイヤを載せる空間を作らなかった。ランフラット・タイヤが担えると考えた。
非常に美しい21インチ・ホイールに、サイドウォールが薄く硬いタイヤが巻かれている。もし筆者が1台購入したら、真っ先に通常のタイヤへ交換するだろう。柔軟に変形することで、一層望ましいドライビング体験を味わえるはず。
とはいえ、ランフラットタイヤのままでも、LC 500は垂直方向の姿勢制御がFタイプより優秀。適度なしなやかさがある。四輪操舵システムとリミテッドスリップ・デフが組まれ、直感的なコーナリングを叶えている。
マスタング・マッハ1の能力を引き出すには、ボディサイズを理解し、シフトレバーと格闘する必要がある。ダンパーはしっとり路面を掴み、ペダルやステアリングホイールは適度に重い。積極的に運転する場面で頼もしく、ドライバーの努力へ応えてくれる。
決して敏捷にコーナリングするクーペではない。洗練性という点でも、高いとはいえないだろう。だが、Fタイプより運転で得られる充足感は濃い。独特の訴求力がある。
結果として、今回の中で最も後世に残したい1台といえるのは、マスタング・マッハ1になりそうだ。マッスルカー好きかどうかを問わず、V8エンジンで後輪駆動という魅力を、長く共有して欲しいと思わせる。
予想以上に妖艶で陶酔的 少し不完全な魅力
実際、マスタング・マッハ1は運転が望外に楽しい。見た目の注目度も高い。大きく膨らんだボンネットやフェンダーのラインが、視覚的なインパクトを生んでいる。長い歴史を持つモデルとして、アイコン的なスタイリングでもある。
ただしマスタングは、この3台では絶滅の危機から1番遠い場所にあることも事実。生まれ故郷のアメリカで強い需要がある限り、当面は生産が続けられるだろう。加えて、筆者が運転を最も楽しいと感じ、日常的に乗りたいと思えたクルマでもない。
レクサスLC 500は、予想以上に妖艶で陶酔的だった。少し不完全な魅力に、わたしはヤラれてしまったようだ。
V8+FRのスポーツモデル 3台のスペック
レクサスLC 500(英国仕様)
英国価格:9万6355ポンド(1744万円)
全長:4770mm
全幅:1920mm
全高:1345mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.7秒
燃費:8.6km/L
CO2排出量:262g/km
車両重量:1930kg
パワートレイン:V型8気筒4969cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:463ps/7100rpm
最大トルク:53.9kg-m/4800rpm
ギアボックス:10速オートマティック(後輪駆動)
フォード・マスタング・マッハ1(英国仕様)
英国価格:5万7710ポンド(約1045万円)
全長:4818mm
全幅:1932mm
全高:1402mm
最高速度:267km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:8.1km/L
CO2排出量:284g/km
車両重量:1851kg
パワートレイン:V型8気筒5038cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:459ps/7250rpm
最大トルク:53.8kg-m/4900rpm
ギアボックス:6速マニュアル(後輪駆動)
ジャガーFタイプ P450 スーパーチャージド75 コンバーチブル(英国仕様)
英国価格:8万1905ポンド(約1482万円)
全長:4470mm
全幅:1923mm
全高:1307mm
最高速度:284km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:9.6km/L
CO2排出量:238g/km
車両重量:1718kg
パワートレイン:V型8気筒5000ccスーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:450ps/6000-6600rpm
最大トルク:59.0kg-m/2500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)