呆れる燃費とお別れ インバーテッド・レンジローバー・クラシックへ試乗 電動化で456ps

公開 : 2023.08.23 08:25

英国伝統のオフローダーを、最新技術で電動化。テスラのコンポーネントが組まれたクラシック・レンジを、英国編集部が評価しました。

テスラ用パワートレインと合体

クラシックカーを電気自動車へ改造する、エレクトロモッドを手掛けるワークショップが欧州では増えている。ただし、希少性の高いクルマへ手を加えることに、賛否両論があることも確かだ。

オリジナルを重んじるカーマニアにも受け入れられる指標の1つが、本来のエンジンが優れていたかどうか。シトロエンDSなら、むしろ駆動用モーターへ換装した方が望ましいかもしれない。フェラーリ・デイトナなら、恐らくネットは炎上するだろう。

インバーテッド・レンジローバー・クラシック(英国仕様)
インバーテッド・レンジローバー・クラシック(英国仕様)

それでは、英国伝統の初代ランドローバー・レンジローバーはいかがだろう。オリジナルのV8エンジンは、哀愁漂う心地良いサウンドを響かせる。かといって、レンジローバーというキャラクターに不可欠かと聞かれれば、必ずしもイエスではないと思う。

そもそも、初代レンジローバーにも1980年代後半に直列4気筒のディーゼルターボエンジンが追加されている。燃費に優れ、少なくない支持を集めた。駆動用モーターへ置き換えても、きっと暴れるファンはいないだろう。

インバーテッド・レンジローバー・クラシックは、AUTOCARでしばしばご紹介するような、エレクトロモッド事例に準じている。優れたベース車両を探し出し、ボディシェルを丁寧にレストア。走行距離の浅いテスラ用パワートレインと合体されている。

駆動用バッテリーは77kWh 最高出力は456ps

駆動用バッテリーはテスラ・モデルS用で、容量は77kWhと充分。レンジローバーのボディシェルに合わせて、モジュールの9ユニットがボンネット内に、6ユニットが荷室フロアに分割され収まっている。結果として、荷室はかなり狭い。

航続距離は、高速道路を走らなければ、最長320kmがうたわれる。これが実際と近い数字なら、空気力学がさほど意識されていない四角い形のSUVとしては、優秀といえる。

インバーテッド・レンジローバー・クラシック(英国仕様)
インバーテッド・レンジローバー・クラシック(英国仕様)

急速充電能力は、DCで最大75kWまで。テスラの急速充電器、スーパーチャージャーの性能は充分に活かせないものの、悪くない効率だと思う。

エレクトロモッドの事例では、もとのトランスミッションが残されている場合も多いが、インバーテッドの技術者は違う方法を選んだ。トランスミッションとトランスファーを降ろし、テスラの駆動用モーターを設置する場所にしている。

プロペラシャフトを介し、前後のリジッドアクスルへパワーが伝えられるため、四輪駆動。最高出力は456psもあり、駆動系は必要に応じて強化してあるそうだ。

サスペンションは、リア側のスプリングを硬いものへ交換し、駆動用バッテリーの重量を支えている。ダンパーは、高性能なフォックス社製の減衰力調整式が採用された。

ブレーキは、フロント側をアルコン社製の4ポッドキャリパーと大径ディスクへ置換。リア側は、オリジナルのままで大丈夫らしい。ブレーキブースターはテスラ用。バッテリーの制御システムなどは、一般的なサプライヤーのアイテムが選ばれている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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