米国における現代のディーゼル(2010年代)

米国のディーゼルエンジンへの愛情は複雑で、2023年現在、乗用車ではほとんど見られない。ディーゼルエンジンは、1990年代には米国国民の記憶から消えつつあったが、2010年代初頭には再び脚光を浴びるようになった。フォルクスワーゲンはターボディーゼルエンジンの供給元として最もよく知られており、シボレーヒョンデマツダといったライバルも参入。しかし、ディーゼルへの信頼は2015年に大々的に報道された「ディーゼルゲート」の発覚後に崩壊を迎える。

ヒョンデはサンタフェにディーゼルを設定する計画を中止し、シボレーは2020年限りでディーゼルエンジン搭載のエクイノックスを廃止した。マツダは2.2LのスカイアクティブDを投入したが、CX-5の高価なグレードにしか設定しなかった。メルセデス・ベンツBMWも2010年代にディーゼルから撤退している。

米国における現代のディーゼル(2010年代)
米国における現代のディーゼル(2010年代)

アストン マーティンシグネット(2011年)

2011年、アストン マーティンのラインナップは、最高出力760psの限定モデルであるOne-77から、トヨタiQ(米国ではサイオンから販売)をベースにした最高出力98psのシティカー、シグネットまで多様性に富んでいた。シグネットはEU(欧州連合)の厳しいCO2排出規制に対応するためのモデルであり、トヨタ車のリバッジであるという事実もほとんど隠さなかった。それでも年間4000台の販売を目指していた。

約300台が販売された後、2013年に生産終了。アストン マーティンは2020年代に入り、初のSUVであるDBXやミドシップのヴァルハラなど、新たなセグメントへの参入を進めているが、再びシティカーを発表することはないだろう。

アストン マーティン・シグネット(2011年)
アストン マーティン・シグネット(2011年)

メルセデス・ベンツXクラス(2017年)

メルセデス・ベンツは、日産ナバラのリバッジであるXクラスを約3年間販売してみて、リンカーンと同じ教訓を学んだ。Xクラスは2018年に世界で約1万6700台が販売されたが、予想を大きく下回る数字だった。生産は2020年に終了し、本稿執筆時点ではメルセデス・ベンツがこ新型のピックアップをリリースする気配はない。

メルセデス・ベンツXクラス(2017年)
メルセデス・ベンツXクラス(2017年)

キャデラック・ブラックウィング・エンジン(2019年)

傑作エンジン「ブラックウィング」を潰したのは誰か? ゼネラルモーターズの誰も手を挙げようとはしないだろうが、おそらく間違いないのは、もうキャデラックに搭載されることはないということだ。このツインターボの4.2L V8エンジンはゼロから開発されたユニットで、CT6-V(写真)で10速ATと組み合わされて最高出力550psを発揮する。CT6-Vは短命に終わり、コストの関係もあってブラックウィングも生産を終了。

噂では、ブラックウィングは2020年モデルの新型エスカレードの高性能バージョンや、CTS-Vの後継車など、他のクルマにも搭載されるだろうと言われていたが、それは正確ではなかった。キャデラックは名称こそ残したものの、エンジン自体は引き継がなかった。

キャデラック・ブラックウィング・エンジン(2019年)
キャデラック・ブラックウィング・エンジン(2019年)

また、ブラックウイングの亜種が第8世代のシボレー・コルベットに搭載されるという話もあったが、それも誤り。ゼネラルモーターズがこのエンジンをマニファットゥーラ・アウトモビリ・トリノ(MAT)というカスタムカービルダーに売却する可能性もあったが、ゼネラルモーターズによって否定されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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