ポルシェ・パナメーラ4S
公開 : 2014.01.26 18:22 更新 : 2017.05.29 19:05
とはいえ、路面温度0℃を下回り、ところどころに雪が残る箱根ターンパイクで、2tを420psで動かすパナメーラ4Sに乗るとなると、最高速320km/hとか600psだとかにいい加減スレてしまったこの身でも、それなりに腹の底に怖気の虫が蠢きだす。
なのだが、走り出せばそんな虫はどこかに消えた。パナメーラ4Sは優速どころか驚速だった。同じV6でもカイエンが載せるVW出自の鋳鉄ブロックVR6でなく、自製V8からバンク角90°のまま2気筒を切り取った形でモジュラー設計されたM46型は、4Sではツインターボ過給されて420psと53.0kgmをひねり出し、ターンパイクの登りで2tを軽々と押し出し、重力加速度の概念を忘れさせる。さすがに2tを加速させるためにターボの仕立ては低速に重きを置いたのか、6700rpmからのレッドゾーンよりもずっと手前でブースト圧を使い切って、最後は出力がダラ下がりになるのだが、過渡域でオーバーシュートをあからさまに効かせて演出に色目を使うこともなく、実直に仕事をして、その結果でドライバーを端倪させるそれはエンジンである。
シャシーも凄い。電子制御の懸架装置はスポーツプラス・モードだと不整で跳ねることがあるが、スポーツなら挙動に棘を作ることはない。物理条件もこちらの見る目もシビアになる911においては、電制ダンパーはその原理上の不利を挙動の綻びとして露わにすることがあるが、フロントエンジン4WDのパナメーラ4Sではエアサスと組み合わされるためもあるのか、融通性という枠組みの中でしっかり仕事を果たす。詳しく観察すれば、メカニカル領域におけるサスペンション動的ジオメトリの特性はロールオーバー傾向なのだが、懸架機構における各種の電制が効いているのか、リヤ内輪が浮き上がって後ろが危うくなるはずの下りコーナーでも後輪が泳いでお腹のあたりが薄ら寒くなる思いをすることもない。4WD駆動力配分の加減と4輪個別ブレーキによる電制ヨー制御との協調も隙はなく、トルク配分がどうのこうの考える暇もなくパナメーラ4Sは望むだけの自転と公転と加速Gを極めて整った均衡に保ったまま提供してくれる。履いているタイヤがミシュラン・パイロット・スーパースポーツだということを考えるとこれは感服に値する。PSSは、同じミシュランでもMXXやPS1のイメージとは違って、それなりの温度依存性があるのだ。
あとの試乗枠で同じコースをケイマンSで辿ったら、各コーナーの進入速度と脱出速度はパナメーラSと似たり寄ったりだった。つまりポルシェは1.4tの縦置きミドシップと同じレベルの機動をしてみせるのだ。これはもうアウディS7などに手が届く境地ではない。ひとつだけ付記するならば、その走りでブレーキは焼けて、制動力は確保されてはいたが、ペダルの足応えは軟甘くなった。存分に味わうならば炭素複合材ブレーキは必要かもしれない。
(文・沢村慎太郎 写真・花村英典)
ポルシェ・パナメーラ4S (PDK)
価格 | 1480.0万円 |
0-100km/h | 4.8秒 |
最高速度 | 286km/h |
燃費 | 11.2km/ℓ |
CO₂排出量 | 208g/km |
車両重量 | 1870kg |
エンジン形式 | V6DOHCツインターボ, 2997cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 4輪駆動 |
最高出力 | 420ps/6000rpm |
最大最大トルク | 53.0kg-m/1750-5000rpm |
馬力荷重比 | 225ps/t |
比出力 | 140ps/ℓ |
圧縮比 | 9.8:1 |
変速機 | 7段DCT |
全長 | 5015mm |
全幅 | 1931mm |
全高 | 1418mm |
ホイールベース | 2920mm |
燃料タンク容量 | 100ℓ |
荷室容量 | 445-1263ℓ |
サスペンション | (前)ダブルウィッシュボーン |
(後)マルチリンク | |
ブレーキ | (前)φ360mmVディスク |
(後)φ330mmVディスク | |
タイヤ | (前)245/50R18 |
(後)275/45R18 |