アバルト500e 詳細データテスト ほどよい速さと優れた経済性 足回りは硬すぎる 価格は高すぎる

公開 : 2023.08.19 20:25  更新 : 2023.10.24 18:39

走り ★★★★★★★★☆☆

ICEモデルの基準からすれば、アバルト500eのペースはウォームハッチ以上ジュニアホットハッチ未満といったところだ。テストコースでは、0−100km/h=7秒フラットという公称値に0.3秒及ばなかった。

0−97km/hは6.9秒で、フォードフィエスタSTの6.6秒には及ばないが、フォルクスワーゲン・アップGTIの8.5秒よりは速い。48−113km/hは6.4秒で、これもフィエスタSTとアップGTIの中間くらいだ。

強烈な加速、とはいかないが、エンジン車のホットハッチで言えば、Aセグメントより速く、Bセグメントにはやや届かないといったレベルだ。
強烈な加速、とはいかないが、エンジン車のホットハッチで言えば、Aセグメントより速く、Bセグメントにはやや届かないといったレベルだ。    SIMON THOMPSON

もちろん、500eはEVなので、この速さはさほど激しく感じられるものではない。トラクションコントロールを完全に切ることはできないので、前輪は23.9kg-mのトルクをまったく問題なく扱って発進。そこからは155km/hの速度リミッターが作動するまで静かに加速していく。

計測はバッテリー残量80%以上で行ったが、20%を切ってもパワーが大きく落ちた感じがしないのはみごとだ。

静かではないと感じたなら、それは外部に向けたサウンドジェネレーターのせいだろう。スペアタイヤがありそうな場所には、防水・防汚仕様の円形スピーカーが吊り下げられている。サウンドのチューニングには6000時間以上を費やしたといい、英国のオーナーのコミュニティから非常に好意的な反応を得たので、英国仕様には標準装備となったのだとか。

そのサウンドは、エンジンを積んだアバルトのエキゾーストノートをかなりうまく再現している。とはいえ、シフトチェンジがないので、まるで2速入れっぱなしで走っているようだ。高速道路は言うまでもなく、B級道路を走っていても、エンジンを回しすぎているように聞こえる。テスター陣は揃って、すぐにスイッチを切った。

走行モードは3つで、ツーリズモ、スコーピオン・ストリート、スコーピオン・トラックと銘打たれた。主に最高出力とエネルギー回生、ステアリングアシストの強さを変更するものだ。

ツーリズモでは136psでスロットルレスポンスはやや緩め。それでもフィアット版を上回る出力で、一般的なドライビングには十分だ。回生ブレーキは強くなり、1ペダル運転も可能だ。

スコーピオン・ストリートではフルパワーを発揮し、そこから回生レベルを引き下げて1ペダル運転をオフにしたのがスコーピオン・トラックだ。

この設定は適度にうまくいっている。しかし、できることなら強めの回生ブレーキだけを独立してオフにできれば、さらによかったのだが。

ブレーキペダルは、EVとしてはプログレッシブな効き方をする。113−0km/hブレーキングが44.6mという結果はおみごとだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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