驚愕体験を平然と生む ピニンファリーナ・バッティスタへ試乗 1903psで357km/h以上 後編

公開 : 2023.08.27 08:26

アウトモビリ・ピニンファリーナによる、電動ハイパーカーが遂に完成。英国編集部が量産仕様をイタリア・トリノで評価しました。

世界最強の制動力を生み出すブレーキ

ピニンファリーナ・バッティスタの車重は、フェラーリ296 GTBより約500kg重い。同等以上のダッシュを披露するには、900ps前後の最高出力では足りない。

2302kgでパワーウエイトレシオを並べるには、約1258psが必要になる。確かに驚異的に速かった。とはいえ、1500ps以上を実感させる勢いはなかったとも思う。

ピニンファリーナ・バッティスタ(欧州仕様)
ピニンファリーナ・バッティスタ(欧州仕様)

乗り心地は上質で、独特の高級感を伴う。サスペンションは、前後ともダブルウイッシュボーン式。レーシングカーのように、直接モノコックへ取り付けられているのも特徴だろう。

ただし、理想的なミドシップ・スポーツカーのように、アクセルペダルの加減でコーナリングラインを自在に調整できるバランスまでは備わらない。安全性と乗りやすさが優先されているようだ。

ステアリングはバイワイヤーで、レシオのクイックさやステアリングホイールの重み付けを調整できる。タイヤからのフィードバックは、殆ど伝わってこないけれど。

ブレーキは、ブレンボ社製で非常に有能。アウトモビリ・ピニンファリーナ社によれば、フロントに組まれる直径390mmのカーボンセラミック製ディスクは、世界最強の制動力を生み出すらしい。

バッティスタの軽くない車重を、完全に忘れさせることはない。それでも、ポルシェ911 ターボと競っても、劣らないパフォーマンスを発揮するように感じた。

カーボン製シャシーの製造はリマック

インテリアは、トリノ生まれの量産車でありながら、プラスティック製部品が殆どない。トリノ・カンビアーノに設けられたアウトモビリ・ピニンファリーナ社の工場で、精巧に仕上げられている。

同社は、バッティスタをハイパーカーではなく、電動スーパーGTだと表現している。確かに動的特性はそれに準じている。だが、荷室は薄く狭い。オプションのラゲッジセットは、2万5000ユーロ(約363万円)するそうだ。

ピニンファリーナ・バッティスタ(欧州仕様)
ピニンファリーナ・バッティスタ(欧州仕様)

生産ペースは、今のところ2週間に1台だというが、毎週1台までペースアップさせる予定とのこと。ラインオフした車両は、殆どが北米市場へ輸出されている。

この工場での作業は、走行可能な状態のシャシーが届いてから始まる。クロアチア・ザグレブ郊外にあるリマック社の工場で、パワートレインが組み込まれたカーボン製シャシーが作られている。

基本的な技術は、リマック・ネヴェーラと同じ。しかし、アンチロールバーとバンプストップ、ダンパー、ルーフ、車内のインターフェイス、発生する熱の管理などは、バッティスタ独自のものだという。

カンビアーノの工場では、品質チェックと各部の再組み立てが行われ、その後にボディとインテリアが組み付けられる。ボディパネルの製造公差は6mm以下。スペーサーを介してシャシーとのフィッティングが確認されると、1度取り外して塗装に回される。

この丁寧な仕事をこなすのは、25年前後の経験を有する職人たち。バッティスタは、高品質な風格を漂わせる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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