ホンダN-WGN
公開 : 2013.12.26 21:01 更新 : 2017.05.29 19:10
N-ONEが出たときには、それがてっきりワゴンR&ムーヴ・キラーかと思っていたら、そうではなかった。一連の新作プラットフォーム軽(=Nシリーズ)は「これがダメなら軽はやめる。しかし、軽をやめたら、将来的に国内生産が維持できる保証はない」という、けっこう背水の陣的な決意のもとに立ち上げられたプロジェクトだった。
Nシリーズのプロジェクト想時に、具体的な計画があったのは「スライドドアのミニミニバンと、それより全高が低めのヒンジドアのクルマ」の2台だったという。知ってのとおり、前者がN BOXとなり、後者がN-ONEになるわけだが、後者の商品企画には“ホンダ版ワゴンR”というシバリはもともとなく、販売現場で競合せざるをえないコンパクトカー市場にも食い込める商品力と、けっしてカルトでは終わらないパッケージを考えたら、たまたまN-ONEのようなクルマになった……というのが真相らしい。
ただ、プラットフォームをゼロから新作して、しかも日本国内専用のNシリーズで、その開発コストを回収して、なおかつ生産ラインを遊ばせず……つまり、国内循環ビジネスとして成立させるためには、もうひとつ条件があった。それは「このプラットフォームで、少なくとも3つのモデルをつくる」である。
その3つめのモデルがN-WGNである。昨年にN-ONEが出たとき、開発陣は「ワゴンR/ムーヴと競合しても、それは結果的な話」とか「1.6m強という全高になったのは、デザインと実用性をゼロから検討した結果」と語っていたが、当時はすでにN-WGNの開発も進んでいたわけで、彼らの言葉は「人真似と思われたくない」ためのブラフではなかった。
比較的自由な発想で結果的にああなったN-ONEとはちがって、N-WGNは最初から、軽でもっとも熾烈なハイトワゴン市場に、真正面から再挑戦するために開発された。ホンダのラインナップ的には、これまでのライフとゼストの統合後継車という感じだ。そのコンセプトやデザインには、ハッキリいって新鮮味はまるでない(失礼)が、かわりに「ライバルにあるものはすべて引き受けて、そのうえで勝つ」ということか。楽屋ネタになるが、N-WGNの広告戦略では“バランス”という言葉が前面で使われているが、開発チーム主導でつくられた資料には“欲張り”という言葉が、かなり意識的に使われてる。そんな言葉尻は、われわれ外野にとってはどうでもいいことだが、群雄割拠の戦場に打って出るN-WGNゆえ、つくり手の思いはハタから想像するより熱いことは事実である。