アンバランスなパワフルさ スマート#1 ブラバスへ試乗 筋肉増強剤を飲んだ小動物
公開 : 2023.09.08 08:25
完全には煮詰められていないシャシー
最新モデルとして、ドライバー監視機能も実装されている。ところが、集中して運転していたにも関わらず、警告が表示されることが何度かあった。監視機能はオフにもできるが、#1 ブラバスを始動するたびに、デフォルトでオンになる。
タッチモニターを操作中に、誤ってシートヒーターをオンにしたことも。メニューのレイアウトには、改善の余地がありそうだ。
ドライビング体験には、好ましい部分とそうではない部分が混在している。クイックなステアリングが与えられ、活発に走る背が高めのクロスオーバーという点で、ミニ・クロスオーバーにも近い雰囲気がある。
ただし、シャシーが完全には煮詰められていない。路面からの入力をしなやかに吸収し、外界との隔離感に優れるわけでもなく、コーナーをダイナミックに駆け抜けられるわけでもない。どちらかといえば、パワーの低い#1の方がバランスは良いと思う。
#1ブラバスでは、アクセルペダルを軽く踏んでも、濡れた交差点での加速時にはホイールスピンしかける。スタビリティ・コントロールが直ぐになだめてくれるものの、落ち着きのない振る舞いへ、追いかけるように対処するに過ぎない。
コーナリング中に路面の隆起部分などを通過すると、負荷の変化へサスペンションが耐えきれず、衝撃とともに姿勢が乱れることもあった。運転が楽しいとまでは感じられないだろう。
アンバランスなパワフルさという魅力
筆者はパワフルなクルマが好きだ。しかし#1 ブラバスは、メルセデス・ベンツCクラスのノーマル・シャシーへ、強力なメルセデスAMGのV8ツインターボエンジンを搭載したような印象。メーカーとして目指した方向性が、しっかり定まっていないように思う。
とはいえ、そのアンバランスなパワフルさが、不思議な魅力も生んでいる。正直なところ、筆者は嫌いではない。
スマート#1 ブラバス(英国仕様)のスペック
英国価格:4万3450ポンド(約786万円)
全長:4270mm
全幅:1822mm
全高:1636mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:3.9秒
航続距離:399km
電費:6.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1900kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:62kWh
急速充電能力:150kW(DC)
最高出力:428ps
最大トルク:55.2kg-m
ギアボックス:シングルスピード(四輪駆動)