軽いフロントに後輪駆動 メルセデスAMG SL 43へ試乗 期待以上の2.0L直4ターボ

公開 : 2023.08.30 08:25

4気筒エンジンの技術的な高みに感心

タイトコーナーの出口でパワーを一気にかけると、ラインが絞られていく様も爽快。幅が295もあるミシュラン・パイロットスポーツ4Sタイヤはグリップ力が高く、簡単にはスライドしない。トヨタGR86のようには振る舞わないが、一体感を引き上げている。

乗り心地も、SL 55よりベター。1インチ小さいホイールのおかげだろう。

メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)
メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)

ただし、V8エンジンが恋しいことも事実。4.0LのM177型は、最高の内燃ユニットの1つだ。心を震わせるサウンドを響かせ、豊かなトルクをみなぎらせ、市街地や高速道路を流しているだけでもドライバーを満たす。

SL 43の長所、軽くなったフロントエンドを体感するには、ある程度の速度域で攻める必要がある。とはいえ、4気筒エンジンの技術的な高みにも感心せざるを得ない。

レスポンスは極めて鋭く、2.0Lという排気量から380psと48.8kg-mを引き出しているのだから。だが、V8エンジンのように記憶へ刻まれる濃密な印象は残さない。滑らかなサウンドも含めて。

9速ATには、低速域では若干のぎこちなさがある。コンフォート・モードを選ぶと、燃費を狙いすぎた変速特性になり、スポーツ・モードでは高回転域まで引っ張りすぎる。シフトパドルは、反応がやや遅い。

燃費は、優しく運転して9.9km/L。少し右足へ力を込めてしまうと、6.5km/L程度まで簡単に落ちる。

多気筒を選びたいのがクルマ好きの本音?

W121型190 SLのように、多気筒版と比べて大幅にお手頃というわけでもない。英国価格は、10万8165ポンド(約1958万円)からに設定された。装備は充実しており、完成度も高く、オプションを選ぶ必要性が低いとはいえ。

英国では、同等の予算でV8エンジンのレクサスLC 500を選べる。間もなく生産を終える、ジャガーFタイプも。

メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)
メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)

英国のように自由な土地でロードスターを探すなら、6気筒や8気筒エンジンを選びたいというのが、クルマ好きの本音だと思う。しかし、排気量に応じて税金がウンザリするほど高くなる国では、SL 43が大いに歓迎されるはず。

ちなみにSLのボディカラーで印象的だったのが、試乗車のサン・イエロー。モノトーン・カラーが多い昨今の道の景色を、明るく彩ってくれる。

メルセデスAMG SL 43 ツーリング(英国仕様)のスペック

英国価格:10万8165ポンド(約1958万円)
全長:4705mm
全幅:1915mm
全高:1353mm
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:4.9秒
燃費:11.0km/L
CO2排出量:207g/km
車両重量:1735kg
パワートレイン:直列4気筒1991ccターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:380ps/6750rpm
最大トルク:48.8kg-m/3250-5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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