ランボルギーニ初のEV 浮き彫りにした日系メーカーの「弱点」

公開 : 2023.08.23 11:50

まさかの「2+2」

今回の公開されたランザドールを見て、筆者の疑念は吹き飛んだ。なんと、最低地上高が少し高めの「2+2」ではないか。

大方の予想では、ランボルギーニBEVは、タイカンとeトロンGTとの共通プラットフォームなので4ドアスポーツと見られていた。

それが「2+2」として登場したことに自動車業界関係者の多くが驚いたと思う。

さらに、新開発の12気筒エンジンと、3台の高密度電気モーターを組み合わせるスーパーカー「レヴエルト」が目指す商品性とは明らかに違う。

こうしたBEVの領域を、ランボルギーニは「ウルトラGT」と呼んでみせた。

あくまでも筆者の私見だが、ウルトラGTはランボルギーニ個社によるマーケティング用語にとどまらないだろう。

ランザドールが登場予定の2020年代後半には、グローバルのおいて自動車の各セグメントで本格的なBEV化が進んでいることは、メーカー各社の中長期事業計画から見て確実な情勢だ。

そうした時代の大きな変化期を先取りして、ランボルギーニはウルトラGTという新セグメントを創造したと言える。

現時点では、ウルトラGTの定義はない。

だが、ランザドールに見られるように、単なるオンロードスポーツカーではなく、様々な走行環境において1000ps超えの超大なパワー/トルク/アクセルレスポンスを堅持し、そして電動四駆による際立つ運動特性によって、多様なライフスタイルにマッチするのが、ウルトラGTのイメージであろう。

日本メーカー苦手 「らしさ」の表現

今回、ウルトラGTというセグメント誕生を見て、改めて感じたのは「BEV時代のキモは、『らしさの追求』」ということだ。

こうした「らしさの追求」について、自動車メーカー各社は極めて厳しい状況に直面している。なかでも、日系メーカー各社は「らしさ」の創造が苦手だ。

今後、クルマがBEV化することで、中規模以下のメーカーはクルマの基本構造であるプラットフォーム、モーター、電池などで大手メーカーの助けが必須となる。

そうなれば、クルマの差はデザインのみになり兼ねない。

だからこそ、メーカーとしてユーザーに、または販売店に対して、そのメーカーらしさをどう伝えるかが、自動車産業にとって最重要課題となる。

その上で、ウルトラGTのような「究極のオールマイティ」といった観点では、各メーカーのらしさが際立つことになるだろう。

一方で、大量生産されるセグメントでは、大手メーカーが市場を「総どり」するのか?

または、ステランティスのように、投資家目線で「ブランドのデパート」を仕立てるようなビジネスモデルが、日本でも定着するのか?

今回ランザドールが具現化したことで、とくに日系メーカー各社の近未来事業に対する
「焦り」が強まったのではないだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事