1956年ル・マン総合5位、クラス優勝のポルシェ 550最強モデルがオークションに

公開 : 2023.08.24 21:53

現役後はアメリカで活躍

ル・マンの後に550A-0104は特徴的なファストバックのルーフを外し、8月のニュルブルクリンクで4位に入賞したのを最後にファクトリーカーとしての任務を終える。そしてアメリカで著名なジョン・ザ・キングフィッシュ・エドガーに売却されレースで好成績を残した。エドガーのチームを引退後は何人かのオーナーを経て、アメリカで定番だったエンジン・スワップが行われ、シボレー・コルベアのフラット6エンジンが積まれる。その後も、何人かのオーナーが改造を重ね、姿は大きく変わっていた。

レースカーの宿命とはいえ、オリジナルの維持という面では不遇な状況にあった550A-0104だが、2004年にポルシェ初期コンペティション・モデルの世界有数のコレクターであるフリオ・パルマズが購入したことで風向きは変わった。彼はすぐさま社内レストア工房で、1956年のル・マン仕様に戻すという大仕事に取り掛かった。レストアを終えた550A-0104は、公の場にほとんど姿を見せなかった。しかし、2015年のアメリア・アイランド・コンクール・デレガンス、2018年のレンシュポルト・リユニオンVI、2022年のモントレーでのル・マン100周年展示などに雄姿を見せている。

ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ
ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ    Robin Adams/RMサザビーズ

予想落札額は10億9500万円

ポルシェ 550Aプロトタイプは4台が作られ、最後の1台である550A-0104が今回、RMサザビーズのモントレー・オークションに出品された。事前に発表された予想落札額は、550~750万ドル(約8億300万円~10億9500万円)と強気の設定だった。これは1956年のル・マン参戦時の姿に完璧に復元され、申し分のないレーシング・ヒストリーを持つ車両だけに、あながち不当な値付けとは言えまい。

過去のオークション結果から初期レンシュポルト・モデルの最高額を見ると、550スパイダーで533万5000ドル、718系ではRS60が540万ドルで落札されているので、550A-0104の予想落札額は順当なものといえる。モントレー・オークションの最終日となる8月19日に550A-0104は、オークション会場のステージに上がり入札が始まった。しかし最低落札額まで入札が続かず、流札に終わってしまった。

ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ
ポルシェ 550Aプロトタイプ・ル・マン・ワークスクーペ    Robin Adams/RMサザビーズ

流れた要因を探ると、フレームはオリジナルだがボディは後年に作られたものだけに、純潔さを求めるコレクターが拒否反応を示したと考えられる。また1950年代のポルシェに興味を持つ層が引退する時期となり、購買層が薄くなったことも影響しているかもしれない。もし5年前に出品されていれば、違った結果になっていたに違いない。

もっとも550A-0104の価値を考えると、ポルシェ・ミュージアムに入るのがもっと美しい結末といえるだろう。それはさておき、RMサザビーズでは価格応談で引き続き販売中だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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