シボレー・コルベット 詳細データテスト 圧倒的エンジン 多面的シャシー もう少し軽ければなおよし

公開 : 2023.08.26 20:25  更新 : 2023.10.24 18:07

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

新たなシャシーの利点は非常に大きいが、C8の標準モデルはミドシップスポーツカーとしてはソフトでマイルドだった。ところがシボレーは、Z06をかなり違うポジションに設定した。

とくにZ07パッケージ仕様では、はるかに高いメカニカルグリップと、明らかに増したフロントのグリップ感を求めたという。これにより、高速コーナーをハードに攻めることが可能になり、ハンドリングの精密さや極限のコーナリンング中のスタビリティに絶大な自信をもたらしてくれる。

B級道路のワインディングで、Z06のこの上ないボディコントロールと張り付くようなグリップはよくわかった。同時に、Z07パッケージはサーキットで使うのが一番だということも思い知った。
B級道路のワインディングで、Z06のこの上ないボディコントロールと張り付くようなグリップはよくわかった。同時に、Z07パッケージはサーキットで使うのが一番だということも思い知った。    JACK HARRISON

それらは結局、ポルシェで言えばRSシリーズのような、特別なモデルを特徴づけるような要素だ。Z07パッケージを得たZ06は、そうしたライバルに易々と肩を並べる。高速域でのみごとな横グリップや、緊密に制御され落ち着いた横方向のボディコントロールを見せるのだ。通常のC8に比べ、増強したと言うよりは一変したと表現するほうがふさわしい。

タイヤに熱が入れば、前輪のグリップと食い付きっぷりは驚異的。その深さを推し量るのはそこそこ骨が折れるほどだ。フェラーリ296ほどステアリングはクイックさを極めたものではなく、手首をちょっと返しただけでタイトコーナーに飛び込むわけではない。それでも、ステアリングを切り続ければ、前輪はグリップし続け、サスペンションはロールを抑えてボディをこの上なく水平に保つ。むりやり振り回すようなことをしなければ、後輪は安定したままでコントロールが効いている。

かなり速くても、レコードラインでコーナリングすれば、車体の重さを驚くほど感じさせない。ただし、トラックかレースの各モードを選べば、ダンピングは必然的に強硬なものとなる。そのため、平滑さをきわめた舗装でなければ、重くインフォメーション豊かなステアリングは、かなり路面の反りを拾って追いかけ、バンプにも反応する。垂直方向の入力に、サスペンションはキツく跳ねる。

おそらく、それを悪化させているのはランフラットタイヤの硬いサイドウォールだ。それでも、本当に問題なのが重量なのは疑うまでもない。重たいものを適切にコントロールして、ポルシェのGTモデルのような洗練性と器用さを持たせるのはきわめて難しい仕事だ。現状においてシボレーはかなりいい仕事をしたが、その道に熟練しているとは言えない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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