ガラスのヒビとドアのキズ フォルクスワーゲン・マルチバン 長期テスト(3) 続くトラブル

公開 : 2023.09.03 09:45

VWの7シーター・ミニバン、マルチバン。初代タイプIIをご先祖に持つ最新版の実力を、英国編集部がじっくり確かめます。

積算2万4230km フロントドアのポケット

フォルクスワーゲン・マルチバンのフロントドアには、上下2段に小物入れが用意されている。上側の小さな方は、運転時につまむお菓子を入れておくのにちょうどいい。

破ったパッケージは、下側の大きな方へ入れておける。灰皿が車内から消えた昨今は、ゴミ箱にちょうどいいポケットがあることがうれしい。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

積算2万4609km 多機能な格納式テーブル

期間の限られたマルチバンとのカーライフを楽しむため、フィッシュ&チップス(白身魚とポテトのフライ)を準備して、砂浜の駐車場へ向かった。車内には、多機能な格納式テーブルが装備されている。

レールに沿ってセンターコンソールをスライドさせ、ボタンを押せばテーブルトップが展開される。エンジンを止めても、ハイブリッドだからエアコンやラジオを気兼ねなく使える。天気は余り優れなかったが、心地いいディナータイムを過ごせた。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

積算2万5990km ガラスの飛び石キズが亀裂に

グレートブリテン島の中部、ノーザンプトンの街を目指していたところ、不意に何かが当たった音がした。大きめの石か外れたホイールナットが、フロントガラス目がけて飛んできたものだった。

クルマを止めて観察してみたものの、目立ったヒビは発見できず。フロントガラスがないモデルを運転する時は、フルフェイスのヘルメットが不可欠だと実感しつつ、そのまま再出発。次の日には、そんな出来事も忘れていた。

TVRの工場前に停まるフォルクスワーゲン・マルチバン
TVRの工場前に停まるフォルクスワーゲン・マルチバン

しかし3日後、同僚からメッセージが届いた。「フロントガラスの亀裂に気付いていましたか?」。と。想像するに、発見しにくいフロントガラス上部の黒い部分へ、飛び石キズができていたのだろう。

メッセージの前日、マルチバンは英国のミルブルック自動車試験場を走っていた。クルマの能力を試すため、そこには路面に凹凸が設けられた区間がある。カーブの途中に、厄介なコブが並んだ場所もある。

フロントガラスは、ボディ剛性を保つ一部を担っている。ボディは走行中に激しく揺さぶられ、僅かにねじれる。走行後、気温が冷えたことで更にストレスが掛かり、亀裂が広がったのだと考えられる。

「小さなキズは、いずれ大きな亀裂に変わる」と、英国でチェーン展開する自動車ガラス修理店は広告を打っている。喜ばしくない事実ながら、彼らのキャッチコピーは正しかったようだ。

部品管理はフォルクスワーゲンの商用車部門

マルチバンのガラス交換を引き受けてくれそうなショップをインターネットで探し、数社の問い合わせフォームへ入力してみたものの、しばらく待っても連絡はナシ。そこでロンドン西部に店を構える、モタスクリーン社へ電話を掛けてみた。

担当者のマイケルは快く応じてくれ、すぐに直ると話していたが、5分後に折り返し電話が。マルチバンは最新モデルで、フロントガラスはサプライチェーンからの入手が難しく、ディーラーへ問い合わせた方が確実だという。

フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)

さらに調べた結果、マルチバンは乗用車用プラットフォームをベースにしたミニバンでありながら、フォルクスワーゲンの商用車部門が部品を管理していることが判明。ありがたいことに、英国編集部のオフィス近くにもそのディーラーがある。

早速連絡し、修理したい旨を伝える。ところが数分後にディーラーから電話があり、フロントガラスは620ポンド(約11万円)で提供できるものの、サイズが合わない可能性があり、修理は引き受けられないという。

「大丈夫です。交換してくれる人を知っているので」。と答え、ディーラーでフロントガラスを購入。モタスクリーン社へ電話を入れると、すぐにマイケルがAUTOCARのオフィスへやって来て、手早く作業を済ませてくれた。

作業費は120ポンド(約2万円)。出張費を考えれば高くない。無事に、マルチバンは完全な状態に戻った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト フォルクスワーゲン・マルチバンの前後関係

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