徹底的なランチア・デルタ マトゥーロ・ストラダーレ 技術ベースはグループAマシン

公開 : 2023.08.28 08:25

レストアを手掛けるマトゥーロ社が、デルタを徹底レストモッド。公道用ラリーマシンといえる内容を、英国編集部が評価しました。

グループAのラリーマシンが技術的なベース

ネザーランド(オランダ)南部に拠点を置くマトゥーロ・コンペティション・カーズ社は、レストモッドを手掛ける多くのワークショップとは成り立ちが異なる。モータースポーツが、その起源にある。

創業者は、起業家のマルコ・ジーラッツ氏と、技術者のフランク・ファン・ガンツェヴィンケル氏という2人。フランクは以前から、クラシックカーによるラリーイベント向けに、ランチア・デルタ・グループA仕様を製作するガレージを営んでいた。

マトゥーロ・ストラダーレ(欧州仕様)
マトゥーロ・ストラダーレ(欧州仕様)

彼が手掛けるクルマは、1980年代の世界ラリー選手権(WRC)を戦っていたオリジナル・マシンより高性能で、耐久性も大幅に向上していた。数1000点に及ぶ部品を独自に開発し、製造も手掛けていたためだ。

ある日、マルコはフランクが仕上げたデルタの1台を購入。ラリーイベントを楽しみ始めた。気の合った2人はデルタのレストアを手掛けるようになり、ラリーマシンの技術を公道用モデルへ応用したら面白いのでは、と考えた。

そうして誕生したのが、マトゥーロ・ストラダーレ。見た目はグループA時代のデルタ・インテグラーレと似ている。しかし公道を走ることを前提に、それ以上の内容へ仕上げられている。

「幼い頃に憧れた名車を手に入れても、実際の走りはイマイチだった、と感じている人は少なくありません。そこでレストモッドの出番です」。とマルコが笑う。

「グループAのラリーマシンを技術的なベースにストリートカーを仕上げ、価格へ見合ったインテリアを与えています。このデルタこそ、あるべき姿です」

細部に至るまで見事なレストモッド

今回は、デルタ・インテグラーレ 8Vを個人的に所有する、同僚のリチャード・レーンもやって来た。そして筆者とともに、艷やかなストラダーレへ見惚れる。あいにく、グレートブリテン島は雨。しかし、上着が濡れたとしても興味は尽きない。

ベース車両は、生産後期のデルタ・インテグラーレ・エボ。マトゥーロ社の仕事は、細部に至るまで見事というしかない。

マトゥーロ・ストラダーレ(欧州仕様)
マトゥーロ・ストラダーレ(欧州仕様)

ボディシェルは地金状態まで裸にされ、錆が完全に取り除かれ、250か所以上の補強が施されているという。強固なロールケージも、インテリアの一部として馴染むよう組み付けられている。

もし可能な限り軽量に仕上げたい場合は、試乗車のようにカーボンファイバー製のボディパネルへ換装も可能。塗装は薄く、カーボンの織り目が透けて見える。

スタイリングはオリジナルのままのように見えるが、ディティールにも拘られている。例えばリアゲートは、テールライトの形状に合わせて、プレスラインの位置が僅かにずらされている。確かにこの方が、まとまりが良い。

テールライト自体も配色が異なる。フロントのウインカーも移設されている。フロントスカートは大きくなり、ボディ底面のオイルサンプ・ガードも兼ねているらしい。

ホイールを固定するボルトは、デルタ・インテグラーレ・エボなら5本だが、4本へ減らされている。グループAマシンが4本だったからだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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