徹底的なランチア・デルタ マトゥーロ・ストラダーレ 技術ベースはグループAマシン
公開 : 2023.08.28 08:25
最高出力365ps、最大トルク50.9kg-m
ダッシュボードには、マトゥーロのロゴが入ったメーターが並ぶ。見た目はラリーマシン然としているが、インテリアの質感は高い。
シートポジションは、フロアの位置とともに下げられている。ステアリングホイールはディープコーンで、好ましいドライビングポジションへ落ち着ける。
バケットシートはカーボンシェル。座面側はスウェードで仕立てられ、座り心地が良い。シフトレバーや油圧式ハンドブレーキのレバー、エアコンのスイッチ類なども、独自のアイテム。ひとつひとつが素晴らしい。
ボンネット内の2.0L 4気筒エンジンは、スチール製ヘッドガスケットとコンロッド、鍛造ピストン、幅の広いタイミングベルトなどを用いてリビルド。ギャレットT3ターボのタービンも新調されている。
バランス取りされ、バランスシャフトは備わらない。当時のレギュレーションに準じたリストリクターを装備した状態で、最高出力365ps、最大トルク50.9kg-mを発揮する。
試乗車はプロトタイプということで、トランスミッションは試作品とのこと。軽量フライホイールに高耐久なベアリングとシール、クラッチなどを採用し、66.0kg-m以上へ耐えられる独自ユニットを開発中だという。
四輪駆動システムは、ビスカスカップリングをアップデート。ステアリングラックは新品で、リミテッドスリップ・デフもリビルドを受けている。
ブレーキは、独自の335mmディスクがフロントに組まれる。サスペンションは、トラクティブ社製の調整式だ。
終始意欲的で充足感が半端ない
つまりストラダーレは、極限的なエボリューションを経た、デルタ・インテグラーレ・エボといえる。そのかわり、英国でのお値段は36万8000ポンド(約6660万円)。オプションも沢山用意されている。
ランチア・デルタで2度のWRCタイトルを勝ち取ったラリードライバー、ユハ・カンクネン氏が、マトゥーロ社のアンバサダーを務めている。性能や耐久性に、間違いはないのだろう。
フロアに接しそうなほど低い位置へ腰を下ろし、高めの位置のステアリングホイールへ腕を伸ばす。フロントピラーは往年のモデルらしく細く、運転席からの視界は広い。
ボディサイズはオリジナルと同じ。全長3900mm、全幅1770mm、全高1365mmと、現代水準では小柄といっていい。
ストラダーレは防音材が省かれており、エンジンを始動させると轟音が直接響いてくる。僅かな車重増と引き換えに、希望すれば防音材を追加できるという。筆者なら、静かな方を選ぶだろう。
クラッチペダルは重い。ステアリングホイールを切ると、ガクガクとLSDの衝撃が伝わる。サスペンションは硬く、英国郊外の傷んだ路面では揺れが収まらない。
ストラダーレは終始意欲的。ステアリングはダイレクトで、レシオはクイック。エンジンは伸びやかに回転を上昇させる。シフトレバーのストロークは長いものの、タッチは正確。極めて好印象だ。
ブーストの立ち上がりは早く、7800rpmまで颯爽と吹ける。ラグは殆どない。ドライバーが求めるほど、ストラダーレは応える。サウンドも刺激的で、充足感が半端ない。