小さな新型ボルボ 消えたスイッチに見る、スウェーデン流のEV作り
公開 : 2023.08.27 09:05 更新 : 2023.08.27 09:51
ドアから消えたスイッチ/スピーカー
たとえば、スイッチ類はタッチパネルに集中したり、スピーカーはダッシュボード上に一体のサウンドバーにまとめた。
パワーウインドウのスイッチはドアではなく、センターコンソール部に備わっている。ドアから、スピーカーやスイッチを廃することでコード類を省略でき、コストを削減しながら収納スペースを増やしたわけだ。
また、シンメトリーなデザインを採用することで、ハンドル位置は右でも左でも多くのパーツを共有化でき、コスト削減を図れる。
しかも、クルマの小型化はスチールやアルミニウムなど必要な原材料を削減でき、その結果C02排出量も抑制できる。
また、ボルボ史上最高のリサイクル素材利用率(アルミニウム/スチール/プラスチック)を誇り、100%クライメイトニュートラルなエネルギーで生産するという。
こうした小さなことの積み重ねが、XC40に比べてC02排出量25%減という“環境にやさしいクルマ”を生み出したわけだ。
新安全装備 大型車と並んだときに
一方で、乗員を守るセーフティデバイスに関しては常にリサーチを進め、ドアオープニング・アラート、ドライバー・アラート、レーンチェンジ・アシストなどの「新機能」を充実させている。
中でもユニークなのは、小さなクルマゆえ大型トラックなどを追い越したり並走する場合、パイロットアシストが車間を広く取ったり、車線内でわずかに反対車線側によせるというもの。
そうして、乗員のストレス軽減や走行安定性を確保してくれる。
ボルボ車としてのデザイン・アイデンティティは、エクステリアではトールハンマーのヘッドランプや垂直型のテールランプなどが継承されている。
インテリアでも、タッチパネルなどのレイアウトは他のボルボ車との一貫性が保たれており、乗り換えても違和感はないだろう。
EX30だけの特徴としては色・素材による個性的表現が挙げられる。オプションにはなるがボディカラーやインテリアの素材は豊富に用意され、それによって遊び心のある表情も与えられる。
最小・最速・最高 そして戦略価格
ボルボEX30は、ボルボ史上「最小」のSUV電気自動車であり、また(日本未導入だが)2モーターのモデルはボルボ「最速」、CO2フットプリントは「最小」、リサイクル素材使用率は「最高」、といった、まさに「小さな巨人」と呼べるクルマに仕上げられた。
日本仕様のEX30は、シングルモーター・エクステンデットレンジバッテリー仕様(69kWh)で559万円という車両価格。補助金などを使えば、実質的には400万円台なかばくらいになるだろう。
これは、日産リーフe+G(60kWh)の583万4400円、テスラ・モデル3(54kWh)の524万5600円と拮抗するものだ。
300台限定で月額9万5000円のサブスクリプションも設定されている。
ガソリン(軽油も)価格の高騰が収拾しない昨今。ランニングコストを考えると、インフラさえ問題なければエンジン車からEVへの乗り換えを考えている人は少なくないだろう。
不動新社長はEX30を「日本のために開発されたEVのよう」と紹介していたが、まさにサイズ的にも価格的にも、日本市場においては最適なEVの1つ。
かつて、ボルボといえば「安全」がテーマだったが、いまはどこのメーカーもセーフティデバイスは充実しており、謳い文句にはなりにくい。EX30の登場で、いまやボルボといえば「環境」がテーマになっているといえるだろう。