麗しいミケロッティ・ボディ ランチア・アレマーノ・アウレリア B53 1台限りのクーペ 後編

公開 : 2023.09.10 17:46

ゆったり走らせるのが気持ちいい

ランチアの工場で生産されたアウレリア・ベルリーナは、どちらかといえば禁欲的な内装だった。こんな空間に身をおいて運転すれば、豊かな時間を過ごせるに違いない。

キーを回して奥へ押し込み、V6エンジンを目覚めさせる。コラムシフトのレバーは、1速が1番奥側。クラッチはつながるポイントが明確で、滑らかに発進できる。

ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)
ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)

ボディの内側には、しっとりした乗り心地のために鉛の重しが詰められ、70psのV6エンジンが想像以上の活発さを披露することはない。加速はスムーズで、1950年代のドライバーへ感動を与えたであろう、不足ないパワー感はある。

トルクが太く、ドライブトレインは高精度で、ゆったり走らせるのが気持ちいい。ドライな排気音は、高級な響きに聞こえる。

ステアリングホイールには適度な重みがあり、安定していて落ち着いている。ブレーキはしっかりスピードを絞る。ふくよかでクラシカルなボディとは裏腹に、アレマーノ・アウレリア B53は、1970年代のような確かな能力を醸し出す。

状態は素晴らしい。多額の費用を投じたレストアから、さほど時間は経過していない。数年前に、オランダ(ネザーランド)のクラシックカー・コレクターが売りに出したタイミングで1度目にしているが、美しさはまったく衰えていない。

現在はアメリカ・カリフォルニアで過ごしており、トルコもしばしば走るという。ベルギーのクラシックカー・ディーラーを介して、新たなオーナーを探している。走行距離はさほど長くないが、空路や海路での移動距離は相当なもののようだ。

番外編:アウレリア・オートテライオの系譜

B50/B51(1950〜1952年)

ピニンファリーナ社以外にも、ベルトーネ社やボネスキ社など、複数のコーチビルダー向けに提供された、初期のアウレリアのプラットフォーム・シャシー。1754ccのV6エンジンを搭載し、B51の方がファイナルレシオがショートで、タイヤの幅は太い。

B15/B15S(1952〜1953年)

ベルトーネ社によって、6ライト・サイドガラスを備えるロングボディのリムジンが81台製造された。エンジンはベルリーナのB21用2.0Lへ拡大され、最高出力は66ps。16インチのホイールを履き、ファイナルレシオも異なる。

B52/B53(1952〜1953年)

ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)
ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)

B50/B51の進化版。様々なコーチビルド・ボディに対応するため、2.0Lエンジンを搭載。ヴィオッティ社が、木材をボディに用いたウッディ・ワゴンを47台提供した。多くのコンセプトカーの他、今回のアレマーノ・アウレリア B53も含まれる。

B55/B56(1955〜1956年)

アウレリアのプラットフォーム・シャシーの最終仕様。ドディオン式のサスペンションを採用し、ピニンファリーナ社が専ら利用した。エレガントな見た目のフロリダとフロリダIIなど、コンセプトカーのベースになり、後のフラミニアを導いたといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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