輸入されない日本の宝石 日産Z トヨタGRカローラ スバルWRX 英国人が羨む1番は? 後編

公開 : 2023.09.09 20:26

英国へは正規導入されていない、日本のスポーツモデル。事情の違うカナダで、英国編集部がその魅力を確かめました。

ファミリー・フレンドリーなクルーザー

今回のトヨタスバルの2台は、パッケージング上ではライバル関係にあるように思える。ターボエンジンがフロントに載り、天候を問わない四輪駆動で、家族持ちもうれしい4ドアのボディをまとう。

ところが、スバルWRX(WRX S4)は3万4965ドル(約377万円)で、トヨタGRカローラは4万8365ドル(約522万円)。カナダ市場での価格は大きく違う。

スバルWRX(WRX S4/カナダ仕様)
スバルWRX(WRX S4/カナダ仕様)

スバルが、往年のインプレッサのようにハードコアなSTI仕様へ取り組んだら、トヨタ・
ガズー・レーシングの技術を凌駕するかもしれない。しかし、現在はカーゴパンツや防水ジャケットが似合いそうな、クロストレックやフォレスターへ力が注がれている。

新しいWRXには、2.4Lの水平対向4気筒ターボエンジンが載り、カナダ仕様では最高出力270psを発揮する。車重は1611kgとサイズの割に重く、動力性能は先代から向上してはいない。

それでも、フォルクスワーゲン・ゴルフ GTIが手を焼くような荒れた路面でも、WRXは安定した走りを披露。リアシートはゆったりしていて、体格の大きい大人でも、かさばるチャイルドシートでも問題無く受け入れる。荷室も広く、実用性は高い。

2000年代初頭の2代目インプレッサのような、シャープな操縦性は備わらないが、洗練度は増している。ファミリー・フレンドリーな、クルーザーへ進化したといえる。

1990年代のインプレッサを想起させる

先代のVA型WRXからCVTが設定され、シリアスなイメージを尊重するファンの不評は買った。しかし、販売数は大きく伸ばした。デュアルクラッチATのように鋭敏な変速は見せないが、水平対向エンジンのトルクを最大限に活かしてくれる。

ダルなラバーバンドフィールも伴わない。もちろん、お望みなら6速MTを選べばいい。

トヨタGRカローラ・コア(カナダ仕様)
トヨタGRカローラ・コア(カナダ仕様)

最新世代では、フェンダーやサイドシルにプラスティック製のボディキットが追加され、クロスオーバー感が強調されている。サルーンのフォルムで、ターボエンジンを積んだ、クロストレックといっても過言ではないだろう。

モデルチェンジ後も、カナダ市場での販売は好調なようだ。変化する自動車市場へ、大人な姿勢で対応した結果ともいえる。右肩上がりではないとしても、英国でもビジネスとして成り立つように思う。

他方、トヨタGRカローラはWRXとは真逆の姿勢から生まれたようなクルマ。ターボチャージャーの悲鳴や明確なブースト感、簡素なプラスティック製の内装などは、むしろ1990年代のインプレッサを想起させる。

3気筒ターボエンジンはレスポンスが鋭く、爽快なサウンドを響かせる。ステアリングはシャープで、有能なセンターデフを備え、テールを思い切り振り回した悪ふざけにも興じられる。2023年に乗ると、楽しさのあまり少し気が狂いそうになるほど。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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