輸入されない日本の宝石 日産Z トヨタGRカローラ スバルWRX 英国人が羨む1番は? 後編

公開 : 2023.09.09 20:26

コンパクトで軽量なGRヤリスの方が特別

ただし、ホンダシビック・タイプRと比較すれば、ブレーキング時の安定性では及ばない。実用性も、WRXと比べれば劣る。逆に、リアシートを省いた2シーターを指定することもできる。

ドライビング体験は素晴らしいが、小さなGRヤリスと比較して、圧倒的に速いわけではない。実用性も、明らかな差があるとまではいえないだろう。欧州大陸にはGRヤリス、北米大陸にはGRカローラと、1台ずつを割り振ったトヨタの考えに理解はできる。

ブラックのトヨタGRカローラ・コアと、ブルーのスバルWRX
ブラックのトヨタGRカローラ・コアと、ブルーのスバルWRX

GRカローラとWRXで、心から欲しいと思えるドライバーズカーを選ぶなら、前者になる。それでも、GRヤリスを置き換えるほどかと聞かれれば、イエスでもない。

ディーラーのショールームへ飾られる、専用ボディをまとった真新しいラリー・ホモロゲーションのようなモデルは、2023年では極めて珍しい。小柄で軽量なGRヤリスの方が特別だといえるし、島国の一般道にもより適している。

WRXは、92%の道が未舗装だとされる、カナダ・ブリティッシュコロンビア州の道路に最適。キャンプの道具や通勤の足にも選びやすい、価格帯にもある。だが現在の欧州では、電動化技術が優先されるべきなのだろう。

オールドスクールな魅力には逆らい難い

そして、日産の新しいZへ考えが巡る。プラットフォームはキャリーオーバーで、車重は1590kgと軽くないものの、オールドスクールな魅力には逆らい難い。

グレートブリテン島の道でも不満ない敏捷性を披露するだろうし、欧州大陸の長距離移動も快適にこなせる力強さがある。スタイリングも、欲しいと思わせるのに不足ない。

日産Z スポーツ(フェアレディZ/カナダ仕様)
日産Z スポーツ(フェアレディZ/カナダ仕様)

今回の3台で、英国人が嫉妬するべき存在といえるのは、日産Zとなりそうだ。並行輸入を手配すれば、ロンドン郊外のガレージへ収めることも難しくはないだろう。

ちなみに、筆者がカナダで愛用しているのは新しいスバルBRZ。英国には、兄弟モデルのトヨタGR86が導入されたが、販売数は限定され短時間で完売したと聞いている。

カナダ市場での価格は、換算すると約2万ポンド(約362万円)に相当する。英国では2万9995ポンド(約543万円)からだったから、大きな価格差に驚かれると思う。本当にお手頃なスポーツカーとして楽しまれており、販売台数も制限されていない。

むしろこちらの方が、禁断の果実的な事実かもしれない。

英国未導入の日本車 3台のスペック

日産Z スポーツ(フェアレディZ/カナダ仕様)

カナダ価格:4万9337ドル(約533万円)
全長:4380mm
全幅:1845mm
全高:1315mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.9秒(予想)
燃費:9.5km/L
CO2排出量:276g/km
車両重量:1590kg
パワートレイン:V型6気筒2997ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:400ps/6400rpm
最大トルク:48.4kg-m/5200rpm
ギアボックス:6速マニュアル(後輪駆動)

トヨタGRカローラ・コア(カナダ仕様)

カナダ価格:4万8365ドル(約522万円)
全長:4410mm
全幅:1850mm
全高:1455mm
最高速度:230km/h
0-100km/h加速:5.3秒(予想)
燃費:11.9km/L
CO2排出量:227g/km
車両重量:1470kg
パワートレイン:直列3気筒1618ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:300ps/6500rpm
最大トルク:37.6kg-m/3000rpm
ギアボックス:6速マニュアル(四輪駆動)

スバルWRX(WRX S4/カナダ仕様)

カナダ価格:3万4965ドル(約377万円)
全長:4670mm
全幅:1825mm
全高:1465mm
最高速度:215km/h
0-100km/h加速:5.8秒(予想)
燃費:10.6km/L
CO2排出量:251g/km
車両重量:1611kg
パワートレイン:水平対向4気筒2387ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:270ps/5600rpm
最大トルク:35.6kg-m/2000rpm
ギアボックス:6速マニュアル(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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