マックイーンのフェラーリ 275GTB/4がオークションに登場 7.9億は高い? 安い?

公開 : 2023.09.01 11:45

8月に開かれたRMサザビーズのモントレー・オークションに、スティーブ・マックイーンが所有していたフェラーリ 275GTB/4が出品されました。結果、7.9億円で落札されましたが、伝説のスターの愛車の価値としてはどうだったのでしょうか?

超カーガイだったマックイーン

ハリウッドの伝説的な主役であり、熱烈な自動車愛好家だったスティーブ・マックイーン。彼の人生は2輪と4輪でのレースを生きがいとし、日常でもフェラーリジャガーポルシェ、コブラなどのスポーツカーに彩られてきた。その代表作といえる作品が、自ら率いるソーラー・プロダクションが制作した本格カーレース映画の「栄光のル・マン」だ。フェラーリvsポルシェの闘いを、レーサーの視点で構成されたリアリティある仕上がりから、今も名作として支持されている。

これまでもマックイーンの愛車は何度かオークションに姿を現している。2007年にフェラーリ 250GTベルリネッタ・ルッソが出品され231万ドルで落札。当時250GTLルッソの相場は75万ドル前後で、マックイーンが所有したヒストリーで約3倍になったのである。2011年には栄光のル・マンのオープニングシーンに登場したポルシェ 911Sが出品された。当時911 2.2Sの相場は10万ドル程度だったが、マックイーン所有車と栄光のル・マンの劇中車というヒストリーから、驚きといえる137万5000ドルで落札されている。

フェラーリ 275GTB/4
フェラーリ 275GTB/4    Tim Scott/RMサザビーズ

フェラーリ 275GTB/4とは

8月に開かれたRMサザビーズのモントレー・オークションに、スティーブ・マックイーンが所有していたフェラーリ 275GTB/4が出品された。

フェラーリ 275GTBは、快適性を重視して開発された2シーターのベルリネッタで、1964年にデビューした。当初はショートノーズ・スタイルだったが、1966年にロングノーズ・タイプに進化する。エンジンは伝統のコロンボタイプの発展形となるV型12気筒SOHCで、3.3Lの総排気量から280psを発揮し、最高速度は258km/hをマークした。機構的にも前後重量配分に優れるトランスアクスルと4輪独立懸架が、フェラーリのロードカーとして初めて採用された。

フェラーリ 275GTB/4
フェラーリ 275GTB/4    Tim Scott/RMサザビーズ

275GTBが人気を集めた理由のひとつが流麗なスタイリングにある。ピニンファリーナの手による’60年代らしい曲線で構成された官能的なラインに、リアフェンダーでキックアップするコークボトルラインやトランク後端を跳ね上げたダックテールなど、当時の流行を取り入れたデザインだった。

1966年10月に開かれたパリ・サロンで進化型の275GTB/4がデビューする。最大の変更点はDOHCヘッドの採用にある。モデル名に追加された「/4」は、4カムシャフトを意味する。4カム化により最高出力は300ps、最高速度は268km/hに達した。スタイリングは2カムのロングノーズ車に準じるが、エンジンフード中央に細く浅いバルジが設けられたことが識別点。275GTB/4は1968年までに300台が送り出された。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事