LEVC TX 詳細データテスト 最新ロンドンタクシー 乗り心地は極上 発電用エンジンは洗練不足

公開 : 2023.09.02 20:25  更新 : 2023.10.24 19:47

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

長い間、英国のタクシー文化はマン&オーバートンが中心だった。1908年、フランスからの自動車輸入業者として設立された会社だ。1948年、この会社はオースティンと連携し、カーボディーズ社とともにFX3を生産。クラシックなシルエットの持ち主だ。1985年までに、マンガネーズ・ブロンズ・ホールディングスはそれらを手に入れ、2006年には中国メーカーのジーリーが加わった。上海で生産したロンドンタクシーを、世界市場へ売り出すことを視野に入れてのことだ。

2013年までに、ジーリーは全面的にそれを引き受け、2017年にLEVCへリブランディング。コベントリー近くのアンスティに5億ポンド(約930億円)かけて社屋を設立した。

アッカーマンリンケージを組み込んだ操舵系は、驚異的な前輪切れ角を実現。かなり大柄でありながら、回転直径は8.45mと異例に小さい。
アッカーマンリンケージを組み込んだ操舵系は、驚異的な前輪切れ角を実現。かなり大柄でありながら、回転直径は8.45mと異例に小さい。    JOHN BRADSHAW

そうしてアップデートされたロンドンタクシーのボディサイズは、BMW X5よりわずかに短くナローで、室内高は前後席とも140mmほど高い。エクステリアのデザインは、ジーリーのバルセロナスタジオが発案したコンセプトに基づいたものだという。歴代モデルよりややまとまりに欠けるところはあるが、どこから見てもロンドンタクシーだとわかるカタチではある。クロームパーツやリアフェンダーの形状などは、ロンドンタクシーのアイデンティティを感じさせる。コンポジット素材のボディパネルは容易に交換できる構造だ。

しかし、このクルマのもっとも興味深い点は、そのボディパネルの下に隠れている。白紙からの完全新設計で、既存のクルマから流用された構造部品はない。シャシーはアルミを接着・焼き付けしたモノコックで、それ自体の重量はスティールを用いた場合より30%ほど軽い370kg。車両重量は、ベーシックな仕様で2150kg、テストした豪華仕様は2230kg。大型バッテリーを積むわりには軽く仕上がっている。

そのバッテリー、以前の容量は31.0kWhだったが、最近になって34.6kWhに強化された。車椅子用スロープの収納場所を避けるように、ホイールベース内の前方床下へフラットに収められている。ここから150psのリアモーターへ電力を送り、WLTP値で126kmの走行が可能。電力が尽きたり、充電レベルを維持したいときには、フロントのガソリン3気筒が充電する。このエンジンが直接タイヤを駆動することはない。

サスペンションは、リアに横置きリーフスプリングを使用。フロントにはデュアルアクシス・マクファーソンストラットに、アッカーマン・ステアリングリンケージを組み合わせ、センセーショナルなまでに極端な前輪切れ角を実現した。回転円の直径は8.45m。ボディサイズの近いX5が最小で12.6mであることを考えれば、いかに小回りが効くかがわかるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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