ジープ・グランドチェロキー・ラレード
公開 : 2013.11.26 18:41 更新 : 2017.05.29 18:34
モノコックボディに4輪独立懸架、それにエアサスペンション、これが現行グランドチェロキーの簡単なプロファイルである。もちろんイマドキといえばそれまでで、ヨーロッパや日本のメーカーを見回せば決して珍しい技術はない。
だが、長年ジープというブランドの中でつくられてきたSUVは少々違う。ボディフレームはラダーもしくはラダーをモノコックにビルトインしたユニフレーム構造で、リヤサスはリジッドアクスルというのが基本形。エアサスなどはもってのほかとなる。現にもっともプリミティブなモデルとなるラングラーは、いまだに前後リジッドアクスルを貫いている。
ではなぜ現行グランドチェロキーはそうなったか。答えはメルセデスMクラスとのハードウエアの共有である。4世代目となるグランドチェロキーにはメルセデスのノウハウが取り入れられた。理由は至ってシンプルで、同じ会社であった時代のプロジェクトが生きていたからだ。提携が解消されても契約は残る仕組みだったのである。
ということで現行型は見事にコイル式リジッドリヤアクスルから脱却。代わりに独立懸架+エアサスという高級車並みのスペックを手に入れたのである。
目的はずばり、オンロード性能の向上。長年アメリカ製SUVはその分野でヨーロピアンSUVに遅れをとってきた。高速安定性やコーナリング性能という面でその領域に追いついていなかったのは事実である。
ただ、そこにも明確な理由はある。アメリカはトーイング(牽引)の国。クイックなハンドリングやガツンと効くブレーキでは、牽引するモーターハウスやバスボートを壊してしまう。そこで、ステアリングやブレーキといった操作系に遊びを持たせているのが実情だ。
なんて話はともかく、そんなグランドチェロキーがマイナーチェンジを受けた。フロントマスクの意匠やインテリアのデザインを変え、8段A/Tを積む。走らせて思ったのはサスペンションのセッティングも変わっていること。よりスポーティな味付けに振ったようだ。
これはどういう意味かというと、メルセデスの技術にさらにフィアット・グループのノウハウが加わったことを示す。すでに本国で発表されている新型チェロキーを見ればわかるが、今回の変更でグランドチェロキーのマスクはその系統となった。いうなればイタリアンテイスト。そしてその新型チェロキーは……アルファ・ロメオ・ジュリエッタとフレームを共有する。
そう考えると、フロントの印象もそうだが、インパネ周りのデザイン処理はまさにそうだ。スッキリしながらもきちんとデザインされたそこはイタリア車的と言えなくもない。そもそもインテリアデザインに関しては意外に無頓着なアメリカ車だが、今回はそれを感じなかった。まぁ、センターコンソールの無意味に大きいカップホルダーは明らかにアメリカ向けではあるのだが。
さて、そんな新型のラインナップだが、日本仕様のエンジンは3種類でグレードは4つとなる。3.6ℓV6のラレードとリミテッド、5.7ℓV8のサミット、それと6.4ℓのSRT8だ。がしかし、今回試乗できたのはV6モデルのみ。それ以外は遅れての日本上陸となる。
では、ラレードとリミテッドのインプレッションだが、8段A/Tの採用は大きなメリットを感じた。最大の効果はパドルシフトの採用で、これまでより思い切った走りができるようになった。下のギヤを引っ張って加速するのもそうだし、コーナー手前でのエンジンブレーキを有効に使える。ちなみに、このトルコンA/TはZF製で、ジャガーやランドローバーに供給されるものと同じと目される。FR専用のそれは6速ギヤのハウジングと同じようなサイズでつくられている優れものだ。
もちろんA/Tモードで走っていても快適。シフトチェンジは滑らかでトントントンとシフトアップしていくが、クロスレシオなのでシームレスにすべてを行う。2000rpm前後で全行程完了! といった感じだ。となると燃費も期待できる。7速もすでにオーバードライブ的なので高速道路での燃費は良さそう。それに細かい話だが、このV6はレギュラーガソリン対応というのも嬉しい要素だ。
それでは乗り心地はと言うと、今回はワインディングロードをメインに試乗した関係もあり、バネ式サスのラレードが心地よく感じた。フットワークが良くクルマをひと回り小さく思わせるほど軽快だ。ステアリングは切りはじめこそ少々軽めだが、途中から重くなり安定する。この辺のリニアなフィールは個人的にも好みである。
これに対しエアサス搭載のリミテッドはここでは本領を見せない。どちらかというとクルマの挙動にエアサスが介入して不自然さをもたらす結果となる。次回は是非ハイウェイシーンでドライブしたいと思う。それとオフロードもそう。ジープとして“泥がどのくらい似合うか”も要チェック項目である。
(文・九島辰也 写真・森山俊一)
ジープ・グランドチェロキー・ラレード
価格 | 427.35万円 |
0-100km/h | na |
最高速度 | na |
燃費 | 8.6km/ℓ |
CO₂排出量 | na |
車両重量 | 2160kg |
エンジン形式 | V6DOHC, 3604cc |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 4輪駆動 |
最高出力 | 286ps/6350rpm |
最大最大トルク | 35.4kg-m/4300rpm |
馬力荷重比 | 132ps/t |
比出力 | 79.4ps/ℓ |
圧縮比 | 10.2:1 |
変速機 | 8段A/T |
全長 | 4835mm |
全幅 | 1935mm |
全高 | 1825mm |
ホイールベース | 2915mm |
燃料タンク容量 | 93ℓ |
荷室容量 | 1027-1950ℓ |
サスペンション | (前)ダブルウイッシュボーン |
(後)マルチリンク | |
ブレーキ | (前)φ328mmVディスク |
(後)φ320mmディスク | |
タイヤ | 265/60R18 |